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□『sweet crescendo』
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緩慢な痛みが、眠りの底から自分を掬い上げた。痛みは少し、それを上回るのは…擽ったさだった。
「…はるか、何を‥しているんです?」
「何でも‥ないです」
「擽ったいんですが…」
「‥すみません、」
「ん、はるか、いい加減に‥」
寝返りを打てば今にも泣きそうな、そんな表情の彼女。完全に覚醒していないトキヤが緩慢な動きで頭を撫でてそのままキス。どうしたのか聞いても春歌は口ごもるだけで、小さな手はシーツを弄んでいた。
「さぁ、観念して…背中を舐めていた理由を話してください、」
「…、引っ掻いてしまいました」
「…?‥あぁ、昨日のですか」
「だってトキヤくん、アイドル‥なのに」
「アイドルではありますが、その前に一ノ瀬トキヤという一人の人間ですし、あなたの恋人でもあります」
「トキヤくんがトキヤくんであることは、分かっています…でも、」
「まぁ胸元をキスマークだらけにしているあなたが言ってもあまり説得力がないんですけどね…、おあいこですよ」
「///っ、あ…、で、でもっ!!」
中々食い下がらない春歌にトキヤくんは短い溜め息を一つ。ここで、付けられた事が酷く嬉しいと言ったから彼女は一体どんな反応をするんだろうか…でも、恐らくこれ以上からかってしまえば恐らく拗ねてしまうから。
「いいんです。甘い痛みって案外癖になりますから‥」
「…甘い、痛み?」
「えぇ、」
こういう痛みですよ、
知っているでしょう?…
そう囁いてからトキヤは春歌の首筋に食らい付いた。吸い付いて紅い紅い痕をまた1っ、そしてまた1っ。
「ね、癖になるでしょう?」
沈黙は肯定。
fine.