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□『Wakeful Midnight』
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「誰ですか、春歌がこんなになるまで飲ませた奴は…」



メールで知らされていた帰宅時間を過ぎていたけれど、許容範囲内ギリギリで収まるか収まらないか、そんな時に部屋の呼び鈴がチリンと鳴った。
読んでいた新書をパタンと閉じてからトキヤは玄関へと歩を進めたが、そこには文字通りべろんべろんになった春歌が音也に半ば担がれた状態で立っていた。
そこで冒頭に戻る…




「誰ですか、春歌がこんなになるまで飲ませた奴は…」



「ちょっ、なんで俺の事睨むんだよトキヤ、怖いって。俺は必死に飲み会の席から七海を助け出したっていうのに‥」


視線で射殺されそうな勢い。
音也は春歌を落とさない様に抱えて直して明らかに不機嫌なトキヤへと託す。意識が全くないわけではないらしく、時折愉快そうな笑みが聞こえてきた。



「すみません音也。あなたには借りが出来ましたね」


「んーこの位気にしないでよ。取り敢えず水でも飲ませて介抱してあげてよ、俺帰るからさ」


じゃね!!そう言い残して春歌から預かっていた鞄を置いていそいそと帰路に着いてしまった。冷や汗が見えたのは気のせいではない…はず。
チラリと見ればとろん…とした瞳を携え、頬を真っ赤に染めた春歌がえへらと笑みを溢していた。



「一体どの位飲んだんです…?」


「ちょっとれす。わたし、ジュースしか飲んでない筈なんれすけど…おかしいなぁ」


「可愛く首を傾げても駄目ですよ。全く、音也に送ってもらうのなら私を呼んでください…」


「らっれ、いひにょせしゃん忙しいし、」


「言い訳は聞きません。しかも音也に抱き抱えられていましたし‥。それと名前、名字呼びに戻っていますよ」


小さく溜め息を吐きながらしょんぼりしている春歌を子供を抱き上げ様に、ひょいと持ち上げた。安心した春歌はそのまま腕をトキヤの背中に回して頬擦り。それから…短いキスを1っ‥。


「…春歌?」


「大好きれすよー、ときやくんっ」


「ったく、あなたは酔いが覚める位に私に抱かれたいんですか?」

酔っ払ってぐでんぐでん、意識がふらついている彼女に手は出すまいと思っていた矢先にこの有り様(よう)。トキヤは頭を鈍器で殴られた様な、そんな感覚…
あぁ、酷い眩暈がする‥



「誘ったのは春歌ですからね。」


「はーい」


「…本当に、知りませんからね」


「どぉーんと来てくださっ‥」



どぉ―――んと、襲われました。




sino al fine.
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