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□『a deux mains』
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「ハルちゃん、」
「な、なんでしょうか…」
「今日で徹夜、何日目です?」
「……2日目?」
「ハズレ。4日目ですよ。」
蛇に睨まれた蛙って、恐らくこんな感じなのかなぁ…なんて悠長な事を考えていたら、いつもは優しい瞳が細く、鋭くなったことに気が付くのに遅れてしまった。
「ったくお前、どれだけ那月が心配してんのか分かってんのか?」
「さ…砂月、くん?」
「こいつ、見た目はいつも通りだが内心は酷く怒ってやがる。こっちまで苛々すんだよ、いい迷惑だ」
「すみません‥」
「無理矢理寝てもらうってのもありなんだが…」
痛くない程度に撫でられたのだけれど、優しくはない愛撫。無理矢理とは?春歌がその問いを投げれば砂月がギョッとしたのが分かった。墓穴を掘ってしまったんだな…そう思った時には後の祭り。
「キスして呼吸奪って強制的に意識飛ばしてベッドに放り投げる」
「なっ////」
「安心しろ、案の定許可が出なかった。お前あからさまにホッとすんな」
「ごめんなさいっ!!」
「ん、」
前触れもなく出された小指。
首を傾げる春歌に砂月はピシャリと一言。
「約束しろ、徹夜は2日まで。いいなっ!!」
「は、は、はいっ!!」
「破ったら有無を言わさずにさっきのこと実行するから覚悟しろよ春歌、」
「砂月くん、心配してくださってありがとうございます‥」
「ハルちゃん、僕とも約束だからね」
にっこり、そんな音が聞こえて来そうな那月の満面の笑み。
小指と小指を繋いで、針千本の歌を唄ってから指切りした。
fine.