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□『bitter orange』
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ふわり、ふわりふわり浮遊…
意識は眠りの深い深い所。
瞼を上に持ち上げたいのにその簡単な動作すら出来ない。追い討ちを掛けるかの様な優しい浮遊感…
どの位経ったのか、時間の感覚も麻痺。
馴染みのある香りの中へと落ち着いた。
「…っ、れ‥んさん?」
「メール、見なかったのかい?遅くなるから先に寝ていていいよって…」
「おかえりなさい‥、言いたくて」
「その前に風邪を引かれたら困るんだけどね。」
「す、…んっぅ、」
すみません…を飲み込まれた。
パジャマの裾を捲られてお構い無しに入っては身体を好き勝手に弄ぶ冬の外気に侵食された冷たい手。体温を奪って行くのにじわりと身体の芯が火照るような矛盾する感覚。
「っふ、…ん‥」
「冷たいベッドは寂しいからね、先に寝ていて温めていて欲しいんだよハニー…」
「でも…」
「申し訳ない…とか言いたいんだろう?いーの、こうやって冷えた手足を春歌の体温を奪って暖を取るんだから。お互い様。」
「っは、…れんさん‥、ん」
「無理矢理眠りの底から引き摺り起こしてもいいんだけど…今夜はキスだけ。待っていてくれてありがと、ハニー‥」
唇を食まれて軽く吸われて小気味リップノイズ。
ふわり浮遊、そのまま意識は底へ。
fine.