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□『crepuscule』
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「なんでここに、お前がいるんだ…」
目が覚めたらあいつか俺の膝を跨がって子どもみたいに抱き付いていた…
眠さで呆けた頭を早急に叩き起こして今の状況をもう少し把握してみる。
目だけ動かしてソファー前のローテーブルを見れば綺麗に整えられた五線譜、あぁ、作業しながらうたた寝したのか…
「こいつ、…こんなにも軽いんだな」
ギュッと、苦しくない位に抱き締めれば口からは小さな溜め息。綻ぶ表情(かお)。
思わず釣られて頬が緩んだ。
「こんなに抱き締めてやってんのに、起きないとか勿体無いぞ…」
「その上、俺のこんな緩んだ顔は早々拝めないのにな。残念なやつ‥」
「早く、起きろよ。…ばか、」
気付いたら独り言ばかり。
時々首を控え目に嫌々する位で起きる気配は限りなくゼロに近い。鼻孔を擽る甘い香り砂月は軽い眩暈を覚えたけれど、腕に力を少し込めた事で振り払ってみたり…
「…本当に、力加減間違えたら壊れそうだな。こいつ‥」
「…うぅ、っ‥」
「魘されてるし‥ったく、おい、起きろ。」
「……さつき、くん」
「ガキみたいに寝てんじゃねえよ。」
「すみま、せん…」
ぼんやりと、夢と現実をさ迷う春歌と目が合ったけれどそれも一瞬。再び抱き付かれて寝息が聞こえてきた。砂月は溜め息を1っ。
「…子守は苦手なんだ、お前は俺の恋人だろう。」
返事はないけれど、擦り寄られて破顔。
改めて抱き締めてから、再び目を閉じた。
fine.