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□『queen's garter』
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肌寒さで目が覚めた。
身体にシーツは巻き付いていたし、空調はきいてはいたけれど、明け方のあの寒々しさには何を纏っても勝てそうにない。
無意識に手を伸ばしたが、意識を手放す前にいた筈の彼に触れることは出来なかった。
「トキヤくん、お仕事に‥行ってしまったのでしょうか…」
肌寒さから逃げようと春歌は手の届く範囲で服を探したけれど、ベッドの下に脱ぎ置かれたシャツ手が辿り着いた。昨日トキヤが着ていたシャツ…
「おおきいなぁ…」
広げて抱き締めて、目を閉じて大きな溜め息をを1っ。それから躊躇することなく被ってから腕を通した。抱き締められている錯覚、眩暈がくらり…
そのまますっぽり着てからベッドに身体を沈めれば、控えめにスプリングがぎしりと鳴った。
「何を…しているんです?」
薄暗闇でも分かるように目を丸くしていたトキヤがいつの間にかベッドの傍らに立っていた。春歌も同じ様に目を丸くして絶句…どうにかしよう。そう思っても今身に纏っているのは彼のシャツのみ‥
「お仕事に…、行ってしまったのかと‥思っていました」
「それで、こんなことを?」
「あ…あの、寒くて‥その、っと‥」
「明け方にしてはどうも刺激が強過ぎますね…眩暈がしました。」
「す、すみません、すぐに脱」
「着るもの、他にありませんよ?」
ハッとしたけれど、先程まで巻いていたシーツはベッドの下。取ろうとしても間違いなく先にトキヤに奪われる。
「それとも‥私にまた、脱がされますか?」
ぎしり、トキヤがベッドに膝を乗り上げた音。
「トキヤ…くん、」
「‥何です?」
「少し、寒いので…」
「いいですよ、好きなだけ私の体温を持っていってください」
トキヤの両手が裾を捲って中へ。あっという間に脱がされたシャツは少し前にあった場所へと戻って行った。
fine.