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□『le cadeau d'un ange』
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「春ちゃん、何…見てるのかにゃ?」




ハヤトとも言えず、トキヤとも言えず、
足して2で割った様な声色に春歌は両肩をびくり飛び上がらせた。急いで消そうとしてももう遅い。傍らにあった筈のテレビのリモコンは既にトキヤが握り締めていた。


「………」


「えっと、その…ですね、あの‥」


「そんなにも、ハヤトがいいんですか?」



返事を待たずにトキヤは座っている春歌を抱き締めてそのままソファーへと強制連行し、彼女が慌てている間に到着。膝の上に座らせて、後ろからギュッと抱き締めた。



「さぁ、今日はどんなお仕置きにしましょうか…」


「あ、あの‥私が好きなのはトキヤくんであって…何て言ったら良いかわかりませんが、ハヤト様は‥その憧れで、ん。」


「‥、言い訳は聞きません。そうですね、…なら、私がいいと言うまで目を閉じるというのはどうです?」



そんなことでいいんですか?そう言いたげな春歌の顔を見てトキヤは口端を上げてにっこり。あからさにホッとした表情の春歌に再度キスをして掌で両目を覆って目を閉じる様にと促した。



「トキヤくん…?」


「ねぇ誰それ、僕の事忘れちゃったの?春ちゃん酷いよぉ‥」


「///っ、は、は‥ハヤト様っ!!」


「それは誰ですか?目を瞑っていても私が分かると信じていたのに…」


「と、トキヤくんっ//ご、ごめんなさい…私…ん。」


謝らなくてもいいですよ…
右耳元で囁かれて心臓がドクンと嫌に跳ねた。それから舐める様なキス。



「ねぇトキヤだけキスしてズルいにゃ…ねぇ、春ちゃん。キスしていい?いいよね…」


「駄目です。春歌は私のですから…」
「独り占めしてズルいよぉ‥、トキヤは絶対に許可してくれないから春ちゃんに聞いてみればいいんだにゃ。ねぇーいいでしょぉ?」


「っ…えっと、その…」


「春歌、」



再度耳元で名前を溜め息混じりに呼ばれれば身体の中心にぞくぞくと何かが下から上へと這い上がる。右の耳元ではトキヤが、左の耳元ではハヤトが。
分かっている、1人で2役を演じているんだってこと。分かっているのだけれど…今頼りになるのは聴覚だけ。
目を瞑るだけでいいなんて簡単だ…心の中で呟いた自分を叱咤したくなった。



「…ハヤト様、ごめんなさい。ダメ、なんです。ハヤト様の事は大好きです。けれど…キスをしたいとか、抱き締めて欲しいとか…して欲しいのはトキヤくんだけなんです。」


「…だそうですよ、残念でしたね」


「ちぇーっ。詰まらないにゃぁ‥じゃぁ今日はもう諦めてかーえるっ」



「あっ、ハヤト様ちょっと待っ…」



咄嗟に目を開けて振り返ればいるのは無論トキヤ一人。空をさ迷う手を掴まれてそのまま唇へ。手の甲に唇が落とされてリップノイズが綺麗に弾けた。



「私がいいと言うまで目を閉じていて下さいと言ったのに‥」


「だって…、」


「言い訳は聞きません。」


「…ズルいです、あんな、二役//」


「だって、春歌を困らせないとお仕置きにはならないでしょう。目を閉じるだけだなんて簡単だと思った事、後悔させてあげます」



瞳に捕らわれれば最後、身動きが一切取れなくなった。言葉を発したくてたまらない口は上手く動いてはくれないし…
追い討ちを掛ける様に何回もキス。あぁ頭が酷くくらくらしてきた‥



「さぁ、私とハヤト‥どちらがいいんですか?」



「…ん、っそんなの、」



つぷり…
太股を伝って来た指先は下着を寄せてナカにナカに。ふるりと震え、膝を擦り合わせた春歌の口からは溜め息と共に嬌声が零れる。トキヤはかぷりと小さな耳を甘噛みしてからそのまま口へと含んで舐めて、聴覚を犯して…吐き出した吐息が嫌に艶めかしくてゾクリと背筋が震えた。



「ねぇ、聞かせて下さい春歌。何が、誰が欲しいのか…」


「んっぁ、っ…ゃ、なかっ//」


「顔、物足りなさそうですよ?ほら、早く…」


「っ、ときや‥くんが、欲しい…です」



顎を掴まれて逃げられないキス。
息苦しさで目をうっすら開ければ妖艶で満足気な笑みを溢したトキヤの端整な顔。見とれてしまった…なんて言ったらどんな反応をするんだろうか。



「さぁ、正直に言えた子にはご褒美です。」


「…どんな、ご褒美ですか?」


「気持ちのいいご褒美ですよ。好きでしょう?」



こくん…
返事はただ首を縦に振るだけ、


言葉なんていらなかった。




fine.
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