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□『turkish harlem cooler』
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春歌はドアの前ではふぅと息を吐いた。
ドラマのBGMの打ち合わせに行ったのだが、思ったよりも時間が掛かってしまった。自ずと帰る時間も遅くなってしまった訳で…疲れてはいないけれど、全くそうとは言い切れない。ドアを引かないのにはちょっとした理由があった。



「あーっ!!やーっぱり春ちゃん玄関前で立ち往生してるし。おっ帰りなさーい!!」



「ちょっ、ハヤトっ!!」



あぁ、トキヤくん、頑張ってくれたんですね…そんなことを思っていたら、軽く突進。倒れる前にガバッと抱擁。



「はや…と、くっ///」


「あぁ春歌、すみません。止めたんですが…」


「トキヤの分からず屋っ!!可愛い可愛い春ちゃんを抱き締めて何が悪いんだにゃ!!ね、はーるちゃんっ」


「理由は明白、あなたは力の加減をしなさ過ぎるんですよ。」


「うぅぅ…はやとくっ、苦し//」


「はっ!!ごめんね、春ちゃんっ!!と、取り敢えず、人工呼吸…んーっ。」



空を切る音…
トキヤの拳がハヤトの頭を直撃。凄まじい衝撃で腕から逃れた春歌をトキヤが透かさず抱き締めて額にキスを1っ。両手で頭部を押さえたハヤトは目に涙を溜めながら至極恨めしそうに睨んだが、それに反してトキヤはしたり顔…



「彼女を絞め殺す気ですか?」


「ううん、寧ろ愛で殺す勢い。」


「………えっと、と、兎に角ここではなんですからそう、リビングに行きましょう!!ね?」




と、部屋の中に辿り着いたはいい。が、春歌が座れば無論二人も付いて来るわけで、トキヤに守られる様に抱き締められ、ハヤトは不機嫌さを前面に押し出しながら春歌の腰に抱き付く…というよりも腕を巻き付けた状態。兎に角、身動きが取れない。
一切、全く、全然。



「トキヤのばかー、あんな全力で打(ぶ)つことないじゃんっ。ねぇー春ちゃん僕の事慰めてーねぇねぇ」


「春歌は私の方がいいそうですよ、ねぇ?」


「え…ぁ、あのっ!!」


「そんなこと春ちゃんはいつ何時何分何秒地球が何回回った時に言ったの?」


「はぁ、負け惜しみは見苦しいですよハヤト。もう少し大人になってください」


「じゃあ大人らしく春ちゃんにキスするっ!!春ちゃんー」


「も、も、二人とも大好きですから仲良くしてくださっ//」



「…………」


「…………」



暫時沈黙。



「僕が先っ!!」


「私が先でしょう…」


「ど、同時です!!ハヤトくんもトキヤくんも喧嘩しちゃダメですっ。」


「…じゃれてるだけなのにゃあ」


「大人気ない‥」


「なので、ひ、一思いにどうぞっ!!」



同時に、笑いを含んだ溜め息が聞こえた。二人に挟まれる形で座り直された春歌は目をキュッと閉じて、大きく聞こえる胸の鼓動に余計緊張。


「……?」


「誰が唇にと言っていました?」


「言ってないからどこでもいいんでしょ…だったら絶っっ対に唇にキスするっ」


「私は最初からそのつもりでした。」


「トキヤっ!!」


「なんですか?」


そぉ…春歌は音もなしにソファーから離れようと試みたが、トキヤの腕に引っ張られて元の位置に。そしてサイド、両側から容赦なしに抱き締められて同時に頬へキス。



「逃げたら、分かっていますよね?」


「逃がさないにゃー、春ちゃん」


「…ご、ごご、ごめんなさいっ!!」



それから絶え間なく両頬にキスの嵐…
時々甘噛みされたり舐められたり。
仕方がないなぁ、なんて。


「愛してますよ春歌、」


「その10倍愛してるっ」


「も、私はその100倍愛してますっ!!」



上気した頬を緩ませて破顔。
二人が、大好きなんです。



fine.
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