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□『open heart』
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春歌を見てると…
鼓動は速くなるし、顔も火照る。
言葉は上手く紡げなくなるし、目線を合わせる事だって困難になる。
これはもしかして、もしかすると…
「なぁなぁ春歌ぁ…」
「何ですかぁ翔くん」
「俺さ、もしかしたら…不治の病かもしれねぇ」
「……。」
サーっと血の気が引いていくのが見ていて分かった。目を見開いて、肺の空気を全部出し切る呼吸の音が痛々しくて…
音符を紡ぎ出していたシャープペンが春歌の手を離れてくるくると回り、カシャンという小気味良い音を立てて床へ落ちた…
「翔…くん、それって」
「俺さ、お前の傍にいると…何ていうかさ、胸が痛くなるんだ」
「……」
「顔も不自然に熱くなるし、言いたい事も上手く言えないし…頭もクラクラするんだよな。」
「そ、それ早く病院に行った方が!!」
「最後まで聞け、お前に泣かれるとすげー困る…」
「翔く…」
これはきっと、確かに、絶対、恋の病。
そう、治ることのない不治の病。
じわりと、少しずつ心や体を蝕んで行って、気付いた時には既に時遅し。相手のことが好きで好きで堪らなくなるんだ…
苦しくて、苦しくて…
「お前のことが好きだ、春歌っ」
「遺言なんて…いりません、」
「な、なに言って」
「私だって、翔くんのこと…す、」
「お前…」
「好きなのにっ!!」
衝動的に抱き締めてごめん、と一言。
重症、恋の病。
fine.