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□『brume d'or』
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「うぅ…っ、苦しくて‥眠れませっ」




聞こえるのは左右にいる2人の寝息と、室温を適度に保っているであろう暖房の音。春歌の頭の下に腕をやりながら空いた手は腰辺りに添える砂月と、腰にギュッッと両腕を絡ませて胸の下辺りで時折頬擦りをする那月。どうしたものかと春歌ははふぅ…と息を吐き出した。



「砂月くんは知らない間に腕枕してるし…那月くんはこんなしがみつくみたいに抱き付いてるし」



心地がいいというか、幸せな気分であることには間違いないのだけれど、それを上回る勢いで苦しい。寝返りも打てないし、どうにかして欲しくても二人を起こしてしまうし…正(まさ)しく板挟み状態だった。



「…いつまでも起きてると、明日持たないぞ‥」



「さ、砂月くん、起きてたんですか…」



「何となく、お前の雰囲気がおかしいと思っただけだ。」



「も、二人にギュッとされるのはいいんですが…苦しくて、眠れなくて」



「な、俺は別に抱き付いてなんか…原因比率的には那月の方が多いだろ」



「そうかもしれませんが、でも‥腕枕は嬉しいです」



春歌は砂月の名前を呼んだけれど返事はなし。再度呼べば頭の下にあった腕は引き抜かれて背中を向けられてしまった。



「…ぅ、すみません、ちょっと調子に乗りました…」



「別に、構わない…」



「…砂月くん、抱き付いてもいいですか?」



「………、」



「さつきくん…?」



「いつもダメだっつっても、抱き付い来んだろ‥」



「そう、ですね。じゃぁ…」



失礼します…
付き合いが長くても変な所で律義なのは相変わらず。春歌はそっと腕を伸ばして砂月を後ろから抱き締め、組んだ指先は丁度鎖骨辺り。寝ながら背負われている様な、そんな体勢…広い背中に頬を寄せて小さく息を吐き出した。



「‥、あったかい…//」



「お前がお子様体温なだけだろ」



「砂月くんだって…」



「ったく無理するな、眠たいなら寝ろ。」



「…声を、聞いていたいので」



砂月は春歌の手の甲に口付けを1っ。
リップノイズが綺麗に響いた。


「…声なんて、起きたらいくらでも聞けるだろうが。」



「…でも、今は‥、ですね」



「分かったから、もう寝ろ、」



言い聞かす為なのか、それとももうすぐ見られる春歌の寝顔に誘われたのか…
仕方がないな、そんな不機嫌さを少し露呈させて砂月は再び春歌と向かい合わせに体勢を変えた。
それから額にキス。



「…さつきく、」


差し出された唇に自分のを合わせて少し、本当にほんの少し吐息の共有…



「…ん、っ‥」


「ほーら‥早く寝ろ、ったく」



頷いてそのまま聞こえてきた小さな寝息に砂月は溜め息混じりの苦笑い。
春歌の腰に腕を巻き付けたままぐっすり寝ている那月が幸せそうに、何度目なのかも分からない頬擦りをした。



fine.
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