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□『frais richesse』
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目の前には自分よりも遥かに綺麗な顔。
先程から穴が空く位視線を送っているのに、起きる気配はゼロ。
本当に寝ているのかも、寝た振りなのかもわからないのが何とも憎らしい…


彼の片腕は自分の頭裏。
じんわりと感じる体温が心地良いが、少しでも身動きをしたら目を覚ましてしまうかもしれない




「(…睫毛、長いなぁ……)」


音なく動かせるのは視線だけ。
少しでも動きさえすれば、その小さな反動で間違いなく目を覚ましてしまう…



「(肌、きれいだなぁ……)」



静かに息を吸い込んで吐き出すけれどまだ起きる様子はなし。瞬きする事を忘れる位に視線を注ぎ込んで注ぎ込んで……




「そんなに見られると、本当に穴が開きそうで恐いなぁ…」



不覚だった、起きる要因が反動だけだと思い込んでいたこと。集中する視線や気配に気付かない訳がない。しまった…と思った時には既に遅く、反射的に退こうとする前に抱きくすめられてしまって……



「は、離しっ!!離‥っ///」



「あんなに視線を注がれたんじゃ、起きない訳にはいかないから…」



「お、起きなくていいですっ!!わたしはただ総司さんのことを見てただけです!!それだけ…」



「自分で認めた」



あぁ、今日一番の墓穴だ…



相変わらず総司さんは話術が達者だと思う。達者なのは私にだけ…なんてとんでもない事を前に言っていたけれど……



「//し、仕方がないんです。総司さんが半端なく格好いいし…綺麗だし‥、それに好きな相手の寝顔見て何が悪いんですかっ!!」



勢い良く言った言葉に彼は目を丸くしていたけれど、肩を震わせて笑い出す始末…
そ、そんなに笑わなくてもいいじゃないですかっ!!


「今回は特別に許してあげる」



「……へ?」



「千鶴ちゃんが眠っている間、僕もそうやって‥穴が開く程寝顔見てるから…おあいこってこと。」



「Σなっ//////」



「僕の気が変わらない内に、早く逃げでもしたら?」



そう言い終わると同時に脱兎の如く千鶴は部屋から飛び出て行ってしまったが、今更ながらに気が付いた。


寝顔見てるから…なんて言わなきゃ良かった。彼女よりも深く墓穴を掘ってしまった、と少し後悔した。



the end.
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