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□『southern comfort sparkle』
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「さぁどうぞ、遠慮なくがばーっと来てくださいっ!!」




目の前には湯煎を施されて融解したチョコレート…甘い甘い甘い、この香り。プロフィールの苦手な食べ物の欄には一言、チョコレート、チョコレート…



「ハニー、これ…何のつもり?」


「アイドルたるもの苦手なものがあっては云々…と、一ノ瀬さんが。克服してもらうにはどうしたらと考えた結果がこれです」


「…ぐ、具体的には」


「友ちゃんが"神宮寺さんは春歌のことが大好きなんだから、春歌にチョコレート塗りたくって…『私のこと食べて』って言えば喜んで食べるわよ"って」


「……………」


試しに指先で一掬い…恐る恐る口に含めばどろりと甘ったるい味覚が遠慮なしに拡がって来た。食べられない訳ではないけれど…苦手なものと記載されている程だ、出来れば食べる機会は少ないに越したことはない…のだけれど、再度一掬い。そのまま春歌の唇へと塗ってから下から上に舌を這わせた。



「ひゃあぁっ////」


「言い出しっぺは君でしょハニー…」


「い、今のはビックリしただけですっ!!大丈夫です、どーんと構えますからどーんと来てくださいっ!!」


「どーんと…ねぇ、」


正直に言うと、楽しくなってきた…
次は頬にチョコレート。その次は再び唇へ。そして首筋。吐息を吐きながら舐めて、そして噛み付いて吸い付いて…羞恥心からくる震えに目を閉じて耐える姿が可愛くて仕方がない。あぁ、これ、欲情してるんだ…そういえばチョコレートって、



「科学的にどうなのかは知らないけど、チョコレートって媚薬と同じ、またはそれ以上だって言われているらしいよ」



「び、…媚薬っ!!///」


「そ、媚薬。知ってる…?」


至近距離、少しベタついた唇を一舐め。意識して目を細めて意地悪そうに見詰めてあげて…たじろぐ彼女、どーんと来ていいよって言ったのは君だよ?
目は鋭いまま、口には笑みを浮かべてゆっくり迫って辿り着いた壁に片手を突いた。


「今、俺さ、君に欲情してるんだよね…」


「よ、欲情っ!!」


「そ、チョコレート沢山舐めたから…」


「…っ違」


「違わない。だから…」


「れん、さ…ん」


「責任、取ってもらうよ。春歌」


両腕は壁へ。逃げようだなんて…思ってないよね?そう言葉なしに目で訴えれば日溜まり色の瞳が忙しなく揺れて、少しだけ可哀想…なんて思ってしまったけれど、そう、言い出したのは君なんだから。



「次、どこに塗ろうかな…」


「な…にを、」


「チョコレート、」



形の良い唇からちらりと覗いた赤い舌。
とんでもない事をしてしまった…春歌がそう気付いた時には既に手の施しようがなかった。




fine.
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