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□『precious blue』
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眠っていた意識をゆっくり掬われて瞼を開ければ明け方の青さだろうか、白々した青が部屋に入り込んでいるのに気が付いた。春歌はキュッと両目を閉じて定まらない視点を修正し、ベッドサイドに置いたと記憶している携帯へと手を伸ばす。が、掴んで自分の方に引き寄せる途中、大きな手に手首を掴まれてしまい、皺だらけのシーツへと静かに落ちた。



「あ…」


「まだ、起きる時間ではないでしょう…?」


こちらに戻ってきて下さい…そう言葉が終わる前にやんわりと引っ張られて腕の中へ。小さな吐息と共にキュッと抱き締められて剥き出しの身体が自然と火照って来る。夜ならまだしも、この時間に…少しだけ背徳感。



「縮込まって、どうしたんです…?」


「…た、体温が…その、顕著で、じわじわと…だ、だから」


「もしかして足りない…とか?あれほど愛してあげたのに…」


「足りなくないですお腹一杯ですっ!!だから…ぁ、」


手足をばたつかせる春歌を制して抱きすくめて首筋に口付け、そのまま舌で一舐め。春歌が言葉を失うのにそう時間は掛からなかった。言葉が吐息に変わり、無意識にもがこうとする足先はシーツを引っ掻いて…吐息と布擦れの音が艶めかしい。



「さぁ春歌、そろそろ大人しく捕まってください…」


「も、既に捕まって…ます」


「なら、どうして逃げようと未だに抵抗するんです?」


「逃げて…ないです」


「では、私を押し返そうとするこの腕は?上へ上へと移動するこの身体は…?」


「それは…」


「そうやって逃げれば逃げる程、私は春歌の事を捕まえたくて追い掛けたくて仕方がなくなるんです…」



さぁ、鬼ごっこはもうおしまいですよ…
言葉と同時に春歌の両腕は片手で簡単にシーツの海へと押し付けられ、纏め上げられる。重くない程度に体重を掛ければ、もがいていた足も大人しくなった。



「トキヤ…く、」


「起きる時間はまだ先ですし、」


「…っでも、ぁ…」


「あなたを愛する時間は十分にありますから…」



どこか楽しそうな笑みを浮かべるトキヤから春歌は目が離せない。でも思考では、まるで金縛りにあったみたいだと冷静に判断を下していたり…が、直ぐ様身体に巻いていたシーツを剥がされたことで意識は完全に奪われた。

絶え間なく与えられる深く、甘く痺れる口付けを春歌は窓から入り込む薄青の中、享受したのだった。


fine.
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