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□『double rainbow』
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「君は…、HAYATOがいなくなっても平気でいられますか?」




その言葉に、私は上手く"はい"そう、笑顔で返事が出来ていたのだろうか…。答えは簡単、間違いなく"NO"だ。
私に向ける眼差しが酷く悲しそうだったから。トキヤくんって、こんなにも感情的だったでしょうか…



「私は、一ノ瀬トキヤとして唄いたいんです…」


「分かっています。それはトキヤくんの次位、重々分かっている…つもりです」


「気付いていないと思いますが、上手く笑えていませんでしたよ、さっき。」


「……、すみません」


「君は悪くないですよ‥」


「HAYATO様は、私に音楽を、曲を作る切欠や夢を与えてくれた存在です…。トキヤくんが、トキヤくんとしてデビュー出来ることは凄く嬉しいんです、」


「…けれど?」


「いなくなってしまうのは…寂、」


ポロポロと涙が零れていることに気付いた時にはもう遅かった。泣きそう…そんな状態だったら我慢は出来たと思ったけれど、気が付いたら頬には涙が伝って伝って。



「ご、…めんなさい。私…トキヤに嫌われても仕方な、っ、ごめんなさ‥っ」


「春歌、」


「でも、HAYATO様は憧れなんです。好きなんですが、恋愛感情じゃなくて…私が好きなのはトキヤくんで‥っふ//」


「今…嬉しい、そう言ったら君は怒りますか?」


両手で顔を覆う春歌の髪を優しく、何度も往復して撫でて撫でて…。涙で濡れた顔を何とかして上げればトキヤは呆れた様な、苦笑いを溢していた。嬉しい…、悲しいの間違えじゃないのだろうか…



「偽りで演じていた自分が、春歌の中で大きな割合を占めていることが嬉しくて…。こんなに本気で泣いて貰えるなんて‥」


「トキヤくん…、」




「不謹慎なのは分かっているんです。それに、今までHAYATOに嫉妬したことは何度かありますが、今日は今までで一番妬いています」


「…嫉妬、ですか」


「HAYATOに春歌を取られてしまいそうで、内心酷く慌てていますよ。柄にもなく。」

「っ、私は…!!」



分かっています。
触れた唇はそう言っていた、と思う。



「ん…っ、ここ…、廊下です//」


「だから、なんですか?」


「…うぅ、」


「これからもよろしくね、僕のだぁ――い好きな春歌ちゃん」



語調はHAYATOでも口調はトキヤ…
春歌の口は閉まることを忘れた様に開いたまま。トキヤが隙有りと言わんばかりに再度キス…胸元で抱え抱いていた大量の五線譜を盛大にばら蒔くまでに、


そう時間は掛からなかった。



fine.
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