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□『love letter』
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私、ついにスマートフォンにしました!!
しかも噂のアイフォン…


電話なんです。でも掌サイズではなくて私と同じ様に人の形をしていて、喋るし世話も焼いてくれるし色々管理もしてくれるし。性別は男の子、設定年齢は15才。
名前は藍くん…由来を話したら単純過ぎて鼻で笑われてしまいました。うぅ…



「藍くん、どうして毎回毎回途中で切っちゃうんですか!!」

「どうしてって、電波が悪かったからに決まってるでしょ?当たり前のこと聞かないでよ」

「1回や2回ならわかりますけど、毎回です毎回っ!!もぉーちゃんとお話させてくださいっ」

「わかった、努力はする」

「本当ですか?」

「僕、ハルカに嘘吐いたことないよ?」


時間だって体調管理だって、そうなんだって。あ、電話…


「トモチカからだよ、ハルカ」

「あ、はい繋いでください藍くん」


友達のトモチカからの電話。週末はいつも通り二人で買い物に出掛けるらしい。日時と待ち合わせ場所、相変わらずというか何というか…。ちなみに女友達だから通話は最後までちゃんと繋いであげる。煩いレイジとかは10秒繋げれば良く持った方だと思う。だって、喋って欲しくないし、詰まらないし……


「じゃあ友ちゃん週末ね、楽しみにしてます」

「今週は何しに行くの?」

「セールがあるから二人でお洋服を買いに行こうかなって」

「今月頭だって新しい洋服買ったでしょ、買いすぎなんじゃない…?」

「う…でも、安くなってるし‥」


「じゃあさ、下見に行こうよ」

「へ?」

「僕のここはあらゆるデータベースに繋がってる。ハルカの好みだって分かってるし、スリーサイズだって知ってる」


ここ…、指先でこめかみを軽くとんとんと叩きながら藍は意地悪そうな笑みを溢した。春歌は予想を裏切らずに茹で蛸状態。余計なことをこれ以上言わせない為に両手を藍の口元に伸ばしたけれど、華麗に躱されてしまった。


「っ藍くん、余計なことはもう言わ」

「あ、トモチカからまた電話」

「どうしたんでしょうか、繋いでくださ‥っん、」

「、ん」

「なに…し、」

「…キス。」

「///あ、ああぁ、藍くんっっ!!」

「はい、電話」


耳元に唇を寄せられれば聞き慣れた友千香の声。待ち合わせの場所を変えようとかそんな内容だったんだと思うけれど、これっぽっちも頭には入って来なかった。自分の名前を呼ぶ友千香の声、代わりに喋る藍の声。


「ボケッとしてるのはいつものことだから心配しなくていいよトモチカ、うん、伝えとく、じゃあね」

「……」

「待ち合わせの場所、変更だって。」

「き…す、」

「おやすみの前とかシてるでしょ、何今さら慌てて」

「だって、えっと…」

「僕とハルカが喋ってたのに電話掛かってきたからその腹居せ。」

「友ちゃんです…」

「っ、あ、相手は関係ない。普通話を遮られたりしたら嫌でしょ?」

「…ヤキモチ」

「じゃない。」


語気が強くなって口調が少しだけ速くなる。嘘を言っている訳ではないけれど、正直に物を言えないときの癖。本人は気付いていないかもしれないけれど…
くるりと背を向けられてすたすた歩き始め、春歌はそれを慌てて追い掛ける。


「ま、待ってください藍くんっ」

「下らないこと言ったハルカが悪い」

「下らなくは…あ、すみません」

「走ると転ぶよ。ほら、」


差し出された手。春歌は藍の手を握り締めればぐいと引っ張られて隣へ。
じと見てくる瞳に春歌は首を傾げ、言葉なしにどうしたの?と問うてみたが、相変わらず視線を逸らさずにじっと見るだけ。


「藍…くん?」

「なんでもない、行こ」


私の電話は、俗に言うツンデレ…というやつみたいです。




fine.
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