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□『harry lauder』
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「その不貞腐れた顔…」


春歌には似合わないよ、そんな言葉が続いたけれど春歌の表情は相変わらず両頬が膨らんでいた。怒っているんだろうけどそうは見えない。林檎は綺麗に切り揃えられたピンクの髪を揺らしながら春歌の前へと歩を進める。


「なぁに、その膨れっ面は。満足出来なかった?足りない?」


顔を覗き込んで笑みを一つ。大きな掌で口を覆い、力を加えれば膨らんだ両頬に溜めていた空気が外へと出ていった。突き出された唇、今すぐ奪いたいとか思うのはそう、君だけ。


身体に巻き付けていた皺くちゃになったシーツを力任せに剥がしてから、そのままベッドに荒く押し倒せばスプリングが大きく軋んだ音。小さな悲鳴が聞こえたけれど無視を決め込む。



「今日、俺の誕生日だよ?」

「知って…ます」

「じゃあなんで?昨日有無を聞かずに君の事抱いたから?何回もシたから?」

「…ちがい、ます」

「あれ、違うんだ…」

「日付、替わった時に…おめでとう言えなくて、だから…その」

「祝ってくれるのは今年だけ?」

「え?」

「来年の誕生日、春歌は俺の誕生日祝ってくれないのかって聞いてるんだ…」

「いえ、来年も再来年もお祝いするつもりですが…」

「なら、来年は日付がかわったと同時にキスしながら言って?誕生日おめでとって」


一糸纏わぬ春歌に少し荒く覆い被さった林檎は目を細めながら懇願。ふるりと震える春歌の首筋に唇を這わせてキスを1っ、2っ…
押し返して来た手は纏めてシーツに沈ませた。潤んだ目でこっちを見るのは反則、また欲情するって…



「今日、俺の誕生日だよ?」

「知って…ます」

「だったら好きにさせてよ」

「でも、さっき…」

「足りないよ、全然。俺が春歌のことどのくらい好きなのか全然伝えきれてない。」


出会ってこうなってこうしてまだ少ししか経っていないのに…俺の愛はそんなにも浅いものじゃないっての。
キスは数え切れない位にした筈なのに春歌は口をパクパクさせて陸に上げられた魚みたい…滑稽だけど、可愛さが勝るからいいか。



「ねぇ、返事してよ春歌…」

「りんご…さ」

「なに?」

「お誕生日、おめでとうござい…ん、」

「っは、…も、無理、駄目。意識なくなるまで付き合ってもらうからね。」


「ちょっ、林檎さ」


右往左往する世話しない頭のその横に、手を付けばピタリと動きは止まる。何かを覚悟したのか喉が鳴る音がして、今にも泣きそうに表情で、声にならない声で名前を呼ばれた…


「いい?俺は待てが出来る程、利口じゃない」

「な、」


ほんと、馬鹿みたいに可愛い…



fine.
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