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□『bitter orange』
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「ダーリン……?」

さっきまでドタバタと暴れる音の響いていた階上が、いつの間にか静かになったことに気付く。

作業に集中していた所為で、一体いつ止んだのかは分からない。


今年で6歳になる息子から父に叩きつけられた「男同士の避けられ得ぬ決闘」をしていたはずの部屋を覗き込むと、柔らかな光。

「ふふ……お疲れ様です」

温かな陽だまりの中、もみくちゃ状態で力尽きて眠っている父子二人。

ダーリンの頬に蹴り入れられている、息子の小さな足をそっと外しながら、笑みがこぼれる。


「ハニー……」「おかあさ……」

二人そっくりな明るい色の髪を撫でていると、同じような愛らしい寝言で返してくれる。

「はい、ここにいますよ」

大好きで、大好きで。
言葉が足りないくらい愛おしい人たちのそばに

「ずーっと、います」




永い永い、愛にあふれた、ある日の午後。
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