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□『speyside glow』
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『ハルカを抱き締めたい』
『ハルカとキスしたい』
『ハルカとデートしたい』
『ハルカと一緒に海に行きたい』
『ハルカと手を繋いで休みたい』
『ハルカと‥』



「次の願いごとは何にしようかな‥」



頬杖を突きながら指先でくるくると器用にペンを回しつつ、藍は書き途中の短冊をじっと見詰めた。が、目の前には顔を真っ赤にして突っ伏している春歌がいる。


「ハルカも願いごと書いたら?」

「も、私は…はい、」

「なんでそんなに真っ赤なのさ‥」

「…っう、」

「ねぇ、なんで?」

「だって、藍くんの願いごとが‥全部、私関連といいますか‥あの、」

「願いごとってこういうのじゃないの?僕何か間違えたかな‥」



そうではないのですが…
根本的に間違っている様で、そうでない様で…兎に角上手く説明が出来なくて困り果てた。


「ハルカは願いごと書かないの?」

「私は…もう、出来てます」

「悩んで書けてないのかと思ってた」

「もう、これしか思い付きませんでした‥」


すすっと目の前に差し出された短冊には見慣れた彼女の文字。小さすぎず大きすぎず…願いごとを見れば堪らず、今度は藍がテーブルへと突っ伏する。


「あ、藍くんっ!!」

「なに、これ‥も、反則‥」

「すみませんっ、で、でも…私は藍くんの願いごとが全部叶えばいいなって…それしか、思い付かなくて」

「悪いだなんて一言も言ってないでしょ…欲がないなって思ったのと、ハルカのことが大好きなんだなって改めて思っただけ‥」

「だ、大好‥好きっ//」


春歌が再び机に突っ伏。投げ出された小さな手に自分の手を伸ばし、指と指とを絡め繋いだ。


「じゃあ何から叶えてもらおうかなぁ‥」

「へ?」

「願いごとが叶うのを待っていたらどれだけ時間が掛かると思ってるの?全部の願いごとに君が関わっているから、まぁ努力次第で今すぐにでも‥」

「えぇっ!!」

「抱き締めるのとキスするのは今すぐに叶うよね、手を繋いで休むのは…今夜叶えてもらうとして」



突っ伏したまま、指を絡め繋いだまま。
突っ伏した同士の目線の高さは同じ。
距離も近い。


「ん、」

「へ?」

「だから、んっ」

「ん?」

「はーやーく、」

「へ?」

「シテよ、キス」


軽く唇を突き出されてのおねだりの破壊力は半端ない。再度催促されて、更に身を乗り出されて…少しずつ縮まる距離。


「早く、」

「っう‥」

「叶えてよ、僕の願いごと」



迷いに迷った挙げ句、最後は必ずすることになるのだと春歌は分かっている。ダテに場数を踏みまくっている訳ではない。少しずつだが学習している…と、信じたい。



「目、瞑って‥ください

「‥仕方がないなぁ、」

「じゃないと、しません‥」


しません…ではなく、出来ません。
少しでも虚勢を張りたい。
けれども、した後の彼のとても嬉しそうな表情を想像しただけで、する前から幸せを感じてしまう。だから、する。
する…のではなく、したい。


「し、しますよ?」

「いつでもどうぞ、」



弾けたリップノイズ、
願いごとが叶えば、それは星になる…



かもしれない‥
そんな七夕祭り当日、七月七日。



fine.
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