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□『arctic star』
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〜♪



「うっ、藍く…あの、」

「なぁに?」

「ブラームスの子守唄、唄うの…は、ちょっと…あの、眠く‥なっちゃうので」

「それが目的だし。あ、ブラームス飽きちゃった?じゃあモーツァルトにしようか」

「素敵です‥、じゃなくてっ!!」



時刻は深夜二時を過ぎた所。
そろそろ休もうと言われてから既に時計の長針は半周した。痺れを切らした藍が何をし出したかと思えば春歌の向かいに座り、両腕で頬杖をしながらあの歌声で子守唄。春歌は正気ではいられない。冗談抜きで。寝ないならキッカケを作ればいい…恐らくそんな単純な考えだとは思うけれど、される側としては堪ったものではない。
引き寄せられる音色と大好きな歌声。作曲中の凄まじい集中力を削ぐのはあっという間だった。


「藍くんっ、も、寝ます‥」

「よしっ、ノルマ達成」

「うっ‥ずるいです、子守唄とか」

「だって、ハルカと一緒に休みたいし」

「っ、上目遣いしないで‥ください//ドキドキ‥しちゃいます」

「カワイイなぁ‥」


頬杖を止めて椅子を引いて立ち上がり、傍らに来て抱き締める。彼女の手からペンが落ちる音、それから背中に腕が回ったことを確認してからお姫様抱っこ。


「それじゃあお詫びに、リクエストを聞いてあげる」

「本当ですかっ」

「うん。ハルカが好きそうなのは大体調べて練習しておいたから、何でもいいよ」

「迷っちゃいます‥えっと、」


そうこう話をしている間にベッドへ到着。二人並んで眠る体勢。手と手はきゅっと絡め繋ぐのがいつものお約束…


「キラキラ星がいいです」

「また?」

「藍くんのキラキラ星、大好きなんです」

「それは嬉しいけど‥でもあれ唄うとハルカすぐ寝ちゃうんだもん。僕としてはもうちょっと」

「えっ、あ‥寝ちゃまずかったのでしょうか、いえ、でもあの歌声を聴いてしまったら…何と言いますか」

「まずくはないけど、先に寝られると置いていかれたみたいで…いや、なんでもないっ」

「じゃあ、今日から一緒に歌います」



せーので始まるキラキラ星。
3周目辺りで歌詞が途切れ途切れに、
4周目に入った頃にはかなり断片的に。
終る頃には言葉にならない言葉の羅列のみ。5周目の最初のフレーズだけ歌って音楽は止む。
緩んだ指先を逃がさない様にキュッと絡め、ほぅと一息。


「一緒に歌うって言ったのに‥」

「あい、く‥」

「なぁに?」


まぁでも、いつもなら1週目で寝ちゃうし…今日はよく頑張った方かな。うそつきでも何でも、かわいいなぁ…本当に。


「おやす‥、なさ、‥ぃ」

「うん、おやすみ。」



いい夢が見られますように、
そんな思いを込めて、額にキスを1っ。



fine.
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