6
□『sunnygrace:EX2』
1ページ/2ページ
「あ、あの‥」
「はい、」
カウンター越しの彼女。しかしぐいと上半身を前のめりにし、珍しく…というかこんな行動的な彼女を初めてみた。今日は随分と慌てていましたよ、なんて伝えでもしたら彼は半狂乱にでもなるのだろうか。
面白そうだ‥
「どうか、しましたか?」
レンが来るのは15時過ぎですよ、と伝えたが首をふるふると横に振るだけ。どうやら"違います"と言っているらしい。
「あ、あのっ!!」
「急ぎの用ならメールですれば」
「そ、そうではなくて、」
「相談、ですか?」
「うっ、」
「レンには出来ないような‥」
「一ノ瀬さんはエスパーか何かなのでしょうか…」
あなた達が分かりやすいだけですよ…と心の中で呟き、口では"さぁどうでしょう"と当たり障りのない回答を返す。さて、どんな相談なのか…
神宮寺さんに彼女はいるんですか?それとも、神宮寺の好きなものはなんですか?
今まで、多くの彼に関する質問をされて来たが果たして。
「お、お子様味覚を‥」
「はい、」
「直すには、どうしたらいいでしょうか」
「………」
お子様味覚、…?
彼女はいつもホワイトモカで、甘めのドリンク。レンはいつもアメリカーノ、エスプレッソを湯増ししたもの…正反対。
あぁ、同じ物を飲んでみたい…か。
揃いも揃って全く。
「今日は‥そうですね、ダブルトールクラシックラテにしてみましょうか」
「…ダブル、?」
「えぇ、ラテにエスプレッソショットを追加して更にシロップを追加。ミルクも入るのでほんのりやさしい感じ‥ですね」
「おいしそうです…//」
「後でレンにこの話をしてあげてください。驚きますよ、きっと。」
「わ、かりました、そのドリンクでお願いします。あの、ありがとうございます一ノ瀬さん」
マグを受け取って満面の笑みを一つ。そのまま2階に続く階段を上り、いつものお気に入りの席へ。
「彼女にエスプレッソショットを追加するなんて早い…なんてムキになって言われると思うと、今から楽しみです」
「楽しそうに笑ってどうしたのさイッチー、」
噂をすればなんとやら。
貴方の事ですよと言えば、ぽかんとした表情だけが返って来た。こんな表情も出来るのかと更に一吹き、口角の緩みを抑えるべく口許に拳を当てて咳払いをする。
「俺の顔に何か付いてる‥?」
「いえ、思い出し笑いとでも言っておきます。七海さん、いつもの席にいますよ」
「ちょっ、それ先に言って。」
明らかに嫉妬している視線を注がれるまであと30分弱といった所か…
トキヤは呆れと楽しみを絶妙に混ぜた溜め息を一つ、笑みと共に溢したのだった。
fine.