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□『will rogers』
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「っ、逃げんなって」
意識して逃げた訳じゃない。
掻き抱かれながら耳元で吐息混じりに名前を呼ばれ、奥の奥まで貪られる。身体の反応が誤作動してそうなったのだ。そう言っても言い訳にしか聞こえないと分かっているから敢えて言わない…、というか今の状況ではまともに言葉も発せない。
考える、伝える、今はその全てが一瞬にして無に帰すのだ。
「うっ‥ぁ、やっ…//」
「悦い‥の、間違いだろっ」
「っ…ん、っ」
「だったらこっち、ちゃんと戻ってこい‥」
ぐいと腰を両手で掴まれて元の位置、声に成らない声を上げれば嬉しそうな吐息が耳を掠めた。空を切る指先を捕まえて指と指とを絡ませて、縋る様に絡ませてきた指先が愛しくて最奥を遠慮なしに抉った。
「だから‥、逃げんなって」
「違う、違っ‥」
「何が‥違うって?」
「またイ‥っちゃ、…うっ、」
「いいって、」
「、‥?」
「そうなる様にしてんだから、」
「ら、蘭丸さ、」
「お前、恥ずかしくて"気持ちいい"だなんて言えねーだろ?」
「ぅっ‥」
「口より身体の方が正直だもんな、お前」
笑み混じりの溜め息が耳に入ればふるりと身体が震え、目を合わせれば思っていた以上に優しいくて、ただそれだけで子宮がずくりと疼いた。その目線と言葉は反則だ。
「そこそこ場数踏んでんのに、慣れないのな‥」
「すみま‥せ、」
「気にすんな、ったくすぐ泣く‥」
「ちがくて…、気持ちが良くて‥涙が、止まらないんです」
「な、」
「言えなくは、ないんです‥」
「だからって今言わなくても…」
「たまには、正直になった方がいいかと‥思いまして」
「タイミング最悪だっての、」
その後すぐ口にしようとした謝罪の言葉は、あっという間にキスで奪われてしまった。腰が退けてしまう位の気持ちよさに内側からずくずくと溶けていく。
「先に謝っとく、」
「へ?」
「手加減なし、悪いな」
「ぁ‥」
手加減なんていりません…
本当の、言いたくても言えない言葉の内。恥ずかしくて言えないのもあるけれど、行為の最中、まともに言葉を紡げないのも原因の一つ。
ぐいぐいと強引に奥に入り込む熱が気持ち良くて背中が反る。キスとキスとの間の息継ぎ、2呼吸分の休符。無我夢中にしがみ付いて両腕を背中に回せば、耳元には笑んだ吐息が注がれる。
「ほら、声出せって‥」
「っう‥」
「正直に‥なるんじゃなかったのか?」
「が、頑張り‥ますっ、」
何を頑張るのか良く分かっていないくせに。まぁ努力だけは認めてやる。
「今夜もいい声で鳴かせてやる」
「っな、なく…」
「手加減なしだかんな、」
男に二言はなし。
以上。
fine.