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□『tropic blue』
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「も‥やめてくださ、」
「んっ…、何を?」
聞かなくたって分かる。
キスマークをこれ以上付けちゃダメ、
分かってるよ、知ってるよ。
でも君の口から何をどうして欲しいのか言って貰わないとやめてなんてあげない。
けど、例え言えたとしてもやめてあげない。
「所有印って、いい名前だよね‥」
「いっ‥た//」
「ハルカが僕のモノって印かぁ‥」
「私は、も‥」
「ボクのモノ?」
「っ‥はい」
吐息混じりに嬉しいと囁きながら、性懲りもなくデコルテ部分に唇を押し当てる。
付け終ったら次、他の所、首筋、項…
最初は押し退けようとしていたか細い両腕が、今では藍の項辺りでキュッと絡め繋がれている。多分彼女は気付いていない。
言ってしまえば慌てて離してしまうだろうし、擽る様な指先の気持ちよさは溜め息が出てしまう程。
「ん…っ、毒々しい位に真っ赤」
「だから、止めてって…言いました」
「僕は困らない、」
「藍くん‥」
「寧ろハルカを独り占めしてるっていう満足感で満たされているからね」
「私も‥付けたいです」
「え」
「へ?あ、いえ、その‥」
思わず零れた本音を慌てて掻き消そうと手をばたばたさせても時既に遅し。
「僕には血が通っていないからキスマークは付かないんだよね」
「あ、あの、すみません、今のは忘れて」
「嫌だ。あ‥じゃあ、そうだ、歯形とかでよければ、はいっ」
少しだけ距離を空けられ、シャツの釦を上から3っまで開襟。ほら‥と差し出された綺麗な首筋、鎖骨、こちらを覗く綺麗な浅葱。惚けていたらくすくすと笑われて更に促す様、どうぞ、なんて言われてしまう。
「も‥やめてくださ、」
「一思いに、いいよ」
「っいいよって、言われても‥だ、ダメです、」
「何で、」
「付けたら、見えちゃいます…ので、」
「君の噛む力だったら、もって明日の朝かな‥ちゃんと考えての提案、抜かりはないよ」
「‥それ、確信犯って言うんじゃ」
「シてよ、ね、早く‥」
ずずいと差し出される首筋、鎖骨。
頭がくらくらする。狼狽えていれば痺れを切らしたのか腕を引っ張られ、半ば強制的に押し付けられる始末‥
「はふぅ…」
「ね‥早く、」
「藍く、」
「して、」
「んぅ…」
息を吸うのと同時に口を開ける。はむっ‥と軽く食まれる感覚。こそばゆい。
それはそれは本当に一瞬の出来事で、数秒後には林檎の様になった春歌が目の前にいた。こんなんじゃあ歯形なんか付かないし‥と言いたげで、不機嫌そうな表情。春歌は体ごと後退。
「だめ、」
「へ?」
「こんなんじゃ全然だめ、」
「え、でも‥」
「もう一回、」
この後これでもかという位に強要され、春歌が降参するのはもう少し先の事‥
fine.