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□『eye opener』
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「ハルカ、」

「はぁ‥い」

「ハルカー、」

「ぅー、と、」

「春歌っ、」

「あと‥ちょっ、と、ああぁっ!!」



見上げれば物凄く不機嫌な藍。
手には先刻まで持っていた小型ゲーム機。宙をさ迷う春歌の両腕‥


「さっきから君の事、再三再四回呼んでるんだけど生返事ばかり…なんなの、これ」

「あ‥の、ですね」

「なに、これ、何bit?僕の方が性能いいでしょ?なんで、これなの」

「藍くんの歌で遊べるゲーム‥です」

「は?」

「巷で流行ってる音楽ゲームといいますか」

「遊ぶなら僕で遊んで」

「なっ!!」

「好きなだけ歌ってあげる、」

「っ、いえっ!!せめて藍くんの関連曲だけは」

「好きなだけ抱き締めてあげるしキスだって星の数位っ」

「え、S又は王冠を取らせてください、み‥美風藍ファンの義務なんですっ!!」

「………」

「あ、藍くん?」

「まけた…、僕よりもスペックの低い機械に、負けた」



へなへなとその場に崩れ落ちる藍、
その隙にゲーム機を取り返す春歌…


「よしっ、月明かりのDEARESTのPRO頑張りますね」

「…僕のこと棄てないで、ハルカ」

「え?」

「だって、そっちの機械の方が‥僕より、いいんでしょ」

「……?藍くんは藍くんなので。えと‥比べるも何も、私の一番は藍くんですよ?」


がっくりと項垂れていた頭を持ち上げれば潤んだ瞳、それからへにゃりと緩んだ頬。キラキラとしているそれに春歌は目を奪われ、そのまま心もかっさらわれてしまった。放置したゲーム機からは耳慣れたあの曲…


「こっち、おいで」

「え…っ、と」

「抱き締めてキスして、好きなだけ唄ってあげる」



差し伸べられた両腕を拒む事なんで出来なくて、春歌はゲーム機の電源を落としてから差し出された両腕にダイブしたのだった。



fine.
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