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□『behaglich』
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「藍くん、長い時間ベランダにいたら体が冷えちゃいますよ」


ロボットの僕にそんなこと関係ないのに、ふわりと肩に掛けられた彼女のお気に入りのブランケット。ココロがふわりと温かくなったから大丈夫だよ、



「ニュースでは沢山見られるって言ってたのに一つも見えないんだよ‥」

「街が近いと空も明るいし、今日は雲が厚いですから」

「流れ星、見たかったなぁ‥」



ベランダの手摺に両肘を突いてその上に顎を乗せながら夜空を仰いだ藍は、隣に来て同じ体勢をした春歌にそう呟いた。


「そんなに落ち込まないでください藍くん。実はずーっと内緒にしていたんですが私、」

「と、突然なに‥」

「私、実は星を掴むことが出来るんですっ」

「…え?」

「こ、こうやってぐぐーっと背伸びをして‥空に手を伸ばしてぇー‥、っよーいーしょっ!!」


ほら‥、そう言われて目の前に出されたのはピンク、ブルー、オレンジの金平糖。
思わず目を丸くしてしまったけれど、どうしてこんなに可愛いことをしてくれるのかと思考回路が若干、混乱した。



「あ、こ‥金平糖じゃありませんからねっ!!」

「分かってる、ハルカが取ってくれた星でしょ?」

「そうですそうなんですっ!!しかもですね、これ食べられるんですよ藍くん」



一粒、人差し指と親指で挟んだと思えばずずいと差し出された。口を開ければひょいと放り込まれるそれ。噛み砕けばガリッと崩れた音、溶けていくそれ、甘いと感じる神経回路。彼女の演出の相乗効果。


「甘い‥」

「ハルカもほら、」


彼女の掌から一粒摘み取ってからリップノイズをワザとらしくたて、金平糖にキス。それからポカンとして開いていた口へと放り込んであげた。数秒後、ハッとしてから一気に赤面、耐えられなくなったのかベランダから逃げ出してしまった。
あぁ、もう‥直接してるわけじゃないのに。さぁ、追い掛けようか。



「ちょっと、ねぇ、僕の事置いていかないでよ」

「でも、あんな‥//」

「間接的なのに?というか、唇には触れていなかいからそれ以下でしょ」

「うっ‥」



追い掛けようなんて思ったけれど、彼女はベランダ付近で右往左往していたから距離的には歩幅6っ分位だった。世話しない春歌の手首をやんわりと掴んで向かい合わせ。唇から零れた感嘆符をキスで飲み込んで、甘い口内を舌で探って掻き回して、その間にまだ持っている筈の最後の一粒を手探りで探した。


「‥ぁ、」

「最後の一粒はブルーか、」

「食べていいで‥んぐ、」

「口、開けてよ」


唇に押し付けたのに、どうやら最後の一粒は食べてもらいたいらしく頑なに唇を閉じたまま。けれども押し込めば存外簡単に春歌の口の中へと入って行った。
恨めしそうに見上げてくる表情、威嚇のつもり?可愛いだけなんだけど…


「大丈夫、ちょっと分けてくれればいいから」

「もう口の中です‥」


顎に指先を添えて上向きに。少しだけ開いた唇を逃さずそのままキスを1っ、逃がす暇を与えず舌を差し込んだ。舌先からじわりと広がる甘さにまた、ココロが温かくなった。



星に、願いを。




fine.
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