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□『happy-Halloween!』
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「藍くんっ、トリックオ」
「お菓子は持ってないから、イタズラしていいよ」
言葉を途中で見事な迄にスパッとぶった切られた春歌の言葉。ドストレートな要望に春歌は正直、今すぐにでも逃げ出したくなった。出来ることならば‥
「お菓子‥食べたかったです」
「あとで好きなだけ買ってあげるよ」
「好きなだけ‥」
「そ、それこそ山ほど」
「具体的にイタズラとは何をすれば‥」
「僕の事を押し倒す、とか」
「押し倒っ!!」
「出来ないなら僕がするよ?」
「な、なぜっ!!」
「なぜって、ハルカからしてくれないから」
容赦なくじりじりと迫る藍、
春歌は良く、考えた。
自分から仕掛けてしまえば…まぁなんとか逃げられるかもしれない。藍から仕掛けられてしまえばもう、逃げられない確定。
‥よしっ、逃げよう!!
「逃げようなんて、思ってないよね?」
右足を一歩後退りしたと同時に掛けられた言葉に盛大にビクリと肩を震わせる。心中を読まれていると慌てた頃には伸びてきた掌で手首を掴まれてずるずると引き摺られ、最初から拒否権も何も無かったのだと今更ながらに気付いた。口から溢れるのは言葉に成らない断片的な母音のみ。
「少しは考えて行動する様になったのは感心するけど、僕から逃げるとか甘いよ」
ひょいと抱き上げられてそのままベッドへとやんわりと放り投げられ、起き上がろうとした瞬間に上から覆い被された。両腕はあっという間に片手で纏められて春歌の頭上に縫い付けられてしまっている。
涙の滲む瞳で見上げれば何故か困った様な笑顔を向けられてしまった…
「何のお菓子が食べたいの?」
「‥いちご、」
「そ、じゃあ後で買いに行こう」
「一緒に、ですか?」
「んー…君の腰が砕けてなければね」
さーっと音を立てて血の気が引く音が聞こえた様な気がした。
響いた断末魔は、甲高かった‥
fine.