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□『carol』
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空からは絶え間なく、飽きることなく雨が降ってくる。傘は持っているけれど、バス停のすぐ向かいにある店の軒下で時刻になるまで待つのは傘を開くのが面倒だから。そういうことにしておく…


「バス、来ないね‥」

「さっき行ったばっかだもんな…あと15分は来ないぞ」

「ごめんね翔くん…、私がもう少し早く上がっていればさっきのに乗れたのに」

「いいよ、別に。お前と一緒にいられる時間が延びたんだし気にすんな」

「ありがとう、翔くん‥//」


おう…、そう短く返事を返せば至極恥ずかしそうな春歌はそれを隠そうと手にしていた紙カップからドリンクを一口。息を吐き出せば視界が白く曇った。


「うぅ、随分寒くなったね…」

「…じゃあ手、」

「へ?」

「だから、手っ!!寒いんだろ?ほらっ」

「…いいの?」

「いいの?って、当たり前だっ!!お前は俺の彼女なんだからなっ、」

「凄く冷たいよ…?」

「どうってことない」

「じゃあ…」


おずおずと差し出してきた手を翔はすかさず握り締めたけれど、氷の様に冷たい手。なんでもっと早く気付いてあげられなかったんだろう…知らない内にごめん、そう呟いていて、名前を呼ばれてハッとして顔を上げれば首を傾げる春歌がいた。翔は何と無く顔を合わせ難くてそっぽを向く。



「なんで、謝ったりしたの?」

「お前の手が、すげぇ冷たかったから。もっと早く気付いてやって、手ぇ繋いでやれば良かったって後悔したから。」

「でも、私からじゃ手繋いでって…恥ずかしくて言えないし」



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