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□『二人の足跡、巡る季節』
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「ちょっ、戻って来い春歌っ!!」


呼んでも呼んでも大丈夫ですの一点張り。転んでも雪が受け止めてくれるだろうと大して心配はしていないが、ドジな彼女は何を仕出かすか分からないのでそろそろ呼び戻すことにした。にも拘らず積もった雪にきゃあきゃあとはしゃいでいる。


「すっ転んで埋もれちまっても助けてやらないからなっ」
「大丈夫ですよ蘭丸さんっ、雪国出身を舐めたらいけまっ、ひやぁあぁ!!」
「…ほら、言わんこっちゃない」


雪国出身だろうがなんだろうが、春歌クオリティなのだ。ぼすりと鈍い音を立て、降り積もった雪の中へと彼女は消えて行ってしまった。大股で歩き進んで来た蘭丸に呆れ顔で見下ろされたにも関わらず、頬を真っ赤にしたままえへらと笑っていた。


「何でそんなにも嬉しそうにしてんだ、マジで怒っぞ」
「楽しいなって、」
「はしゃぎ疲れてあとでへばるなよ?」



返事と同時に伸びてきた腕、そのまま引っ張られて倒れ込む。危ねぇだろと怒鳴る前に目の前には相変わらず楽しそうに笑う春歌がいて、手加減しまくった頭突きを喰らわせた。


「あいたっ」
「っまえなぁ」
「蘭丸さんは楽しくないんですか?」
「雪なんかもう見たくねぇって程見てるっつーの、」
「私は蘭丸さんと一緒だから楽しいです、とっても楽しいですっ!!」
「っあー、わかった、そーかよ、」



照れ隠し、緩んで仕方のない頬を見られたくなくて体を反転させ丁度春歌の隣に肩を並べる様に雪の上へと寝転がる。分厚いコートだから雪の染み込む心配はないが、寒いことは寒い。隣からは笑い声、ちらりと見えた鼻は真っ赤だった。


「風邪、ひくぞ‥」
「防寒対策はばっちりです」
「用意周到、」



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