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□『sunny grace:EX7』
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「レンの家に泊めてあげれば?」


椅子を引いた大きな音。何事かと藍が傍らを見上げれば瞠目、赤面して意味のなさない母音を呟くレン。あぁ、予想通り‥


「だって彼女の家がどこにあるのか分からないんでしょ?起きる気配もない。考えた果てに行き着くのってこの方法じゃない?」
「あ、いや、だ、だからって‥」
「見知らぬ人って訳じゃないし、」
「で、でもた、他人の男の家だし、別に送り狼だとかそういうのを言ってるんじゃなくて‥」
「少しは落ち着いたらどうです?」


呆れ溜め息を吐きながらの言葉が背後から聞こえてきた。ここは冷静な人物に聞けばいい解決法が‥


「トキヤはどう思う?」
「そうですね、やはりレンの家に連れてかえって一つ屋根の下で」
「ちょ、やめて、本当!てか二人とも俺で遊ぶのいい加減にしてくれよ」
「他に方法があるのなら聞きますが‥」
「‥‥‥、」
「そんなに重く考えなくてもいいんじゃないかな、ま、頑張って」
「幸運を祈りますよ、レン」


眩しい位の笑顔を二人から送られたレンは閉口するしか出来ず、どうしたものかと瞳を泳がせた。視界に入るのは未だ沈黙したままの愛しい彼女‥


「襲うとかまず有り得ないだろうし、」
「えぇ、ヘタれですから」
「寝込みを襲うとか考える前にソファーに突っ伏して悶々と考えてそう‥」
「想像に容易いですね」
「いつか」
「‥いつか?」
「何です?」


レンは気持ちを切り替えようと大きく息を吐き出して、無造作にテーブルに拡がった五線譜を掻き集めて角と角とを合わすべくトントンと軽く叩き付けた。


「いつか二人に仕返し、するから」



からかわれていることは分かっているのに、涙目になったレンは恨めしそうに二人を睨み付けた。



fine.
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