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□あなたへの月
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銀さんが帰ってきて、居間で出迎えたら、引き倒された。
そのまま荒々しく口に噛み付かれる。

「……いっ…!」

キスをするにしたってもうちょっと優しくして欲しいものだ。

ああ、またか。

新八は口づけをしながらぼんやりと思った。
銀時の舌が首筋を這い回る。なめくじのようなその感覚に、新八はぞくり、とした。その先の快感を予感させる。

「うっ……」

口づけながら、銀時は新八の袴に手を掛けた。
袴を完全に脱がしてしまうと、銀時は新八の着物の前をぐっと広げた。月明かりにあらわになる若い肌。

新八の口を犯しながら、銀時はその手で左胸の突起を弄ぶ。

「…っん……」

快感と痛みが、一緒になって、新八の頭に伝わる。親指でぐり、とつぶされたかと思えば、摘まれて引っ張られる。

「ふっ…はぁっ」

ようやく開放された口で、新八は空気をこれでもかと吸い込んだ。銀時の舌は頬から耳から首筋へうごめいていく。

ぴちゃ、と音がすると新八の体がびくりとはねた。

「あっ……」

銀時の舌が右胸の突起に触れて、ずるりと舐めあげられる。しばらく優しく舐めていたかと思えば、いきなりガリ、と歯で挟まれた。

「あぁっ……」

その痛みでさえ、新八の体を高ぶらせる要素になる。

もっと、と口に出すことは出来ないから、新八は銀時の頭を抱えて自分の胸に押し付けた。のけぞった首でそのまま左を見ると、銀時のデスクの後ろの窓からキレイな三日月が見えた。

今日は何回犯されるのだろうか。

それを享受してしまう自分も、きっと同罪なのだろう。

でもこんな弱い銀時を拒めるほど、新八も強くない。

銀時の左手が、ゆるく反応している新八の中心をゆっくりと握った。

「あっ…!」

ゆうるりと手を動かし始めると、ひときわ高い声が上がった。銀時の大きな手が、長く太い指が、上へ下へと、新八を翻弄する。

「あっ…あっ…!」

たまらなくなり、新八は銀時の着流しを握る。ぐちゅり、と卑猥な音が耳についた。

銀時の眼はまっすぐに新八を見下ろしている。その眼から目を離したくなくて、新八は両腕を伸ばし、銀時の頬を包み込むように撫でる。銀時の顔が近づいて、また舌がぬめりと口の中に侵入してくる。

「んうっ…」

銀時の手が速度を上げる。新八の限界が近い。

「はぁっ…僕っもうっ……!」

口を離して新八が懇願する。

「ああぁっ……!」

首をそらし、血管が浮き出るほど手を握り締め、新八は果てた。



快感を放出し、冷えて行く体。

だけどそれで終わらないことを、新八は自分を組み敷くこの男に身をもって教え込まれた。

正直、セックスは好きじゃない。
男同士の、この行為をセックスと呼んでいいのかわからないけど。

だけど、こんな行為でしか貴方は『泣けない』から。

肩で息をしながら、新八は光る銀色の髪に右手を伸ばした。

「銀さん…」

普段なら、この行為の最中に名前を呼んだりしない。

「なんて顔してるんですか…」

まるで幼い子供が迷子になったよう。

「何があったのかなんて聞きませんし、痛いのも構いません。」

新八は、ゆっくりと、確実に銀時に聞こえるように言葉を口にする。

「僕はここにいますから、そんな顔しないでください。」

ふわりと笑う新八。銀時の頭から頬に、その手を滑らす。

銀時が新八の右手を引いて、その腕の中に閉じ込めた。

「……新八おっとこまえ。」

その頭を新八の右肩にうずめる。
新八は両腕を限界まで上げて、銀時の背中に触れた。

「銀さんがヘタレなんですよ。」

右肩に水がぽたりと落ちる気配がしたのは知らない振りをしてあげよう。






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Co/cco:あなたへの月


身体的に抱かれるのは新八だけど、精神的に抱かれるのは坂田であって欲しい(願望)
2010.05.29 月見 梅

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