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□接吻
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優しく甘く口づける。お前と一つになりたいから。

「んん…」

新八は腕を伸ばして銀時の首に回した。銀時もその腰に腕を回し、より深くまで舌を入れる。二人の舌が蛇のように絡み合い、唾液が混じりあう。

銀時はそのまま布団へ、新八の体をゆっくりと押し倒す。

唇を離せば名残の糸が引いた。

「…はあ、ん…」

離した唇を頬に落とし、そのまま耳まで舐め上げる。耳の形をなぞるように舌でねぶれば、新八の口から吐息が漏れた。

耳を犯しながら新八の袴の紐を緩め、乱暴に脱がす。体を隔てる布が邪魔だ。早く肌を合わせたい。

「ぎ、んさ、」

着物も剥ぎとれば、無駄な肉のついていない四肢が銀時の眼前にされされた。その体は暗い中でも白く淡く発光しているようだ。

「なに?」

答えながら、銀時はその胸の飾りに手を這わした。指先で摘んで転がすように弄ってやると、新八は眉をひそめた。指でつぶすようにした後に、軽く引っ張る。そこはすぐに充血してぴんと張り詰める。

「あ…それ…」

「これがいいの?」

銀時はにやりと笑みを浮かべて、反対側をべろりと舐め上げた。円を描いてくるくるとそのまわりを舌先でゆっくりなぞる。唾液を十分に絡ませて、赤子のようにちゅうちゅうと乳首を吸い上げた。

「ふっ…ん…」

新八の中心が主張し始める。若い雄を溺れさせることなど簡単だ。新八は銀時の手をつかんだ。少し汗ばんでいる手は、新八がどれだけ欲情しているかを銀時に伝える。

「どうしたの?」

新八の胸から顔を上げないままで尋ねる。あくまで優しく、怖がらせないように。だけど一番敏感な部分にはあえて触れない。新八が求めてくるのを待つ。

「んぅ…」

新八は銀時の頭を抱えて訴える。普段、理性の塊のような少年は、なかなかそれを口にしようとしない。羞恥心が邪魔をしている。

銀時は柔らかく張りのある内股にその手を這わせた。熱を孕んだ肌に、自分の手がよく馴染むことに嬉しくなる。

「言わないとわかんねーよ?」

「あっ…」

頬を赤らめて眉をひそめる少年の目に、うっすらと欲が浮かんでいるのを銀時は見逃さない。新八のことは全てわかる。どうされると嬉しいのか、どう犯せば感じるのか。何度も抱いた体だ。

銀時は新八の胸から顔を上げて、足を広げさせた。

「やっ…!」

すでに張りつめている新八自身は、物欲しそうに涎を垂らしている。

「あらやだ、新ちゃん。こんなにしちゃって。」

だけどまだ触らない。新八に分からせる必要がある。

お前は、俺に触られるだけでこんなになっちまうんだよ。俺無しじゃいられない体になってるんだよ。

それは全て銀時の目論見通りだった。

開いた脚の内股の白い肌に一つ、口づける。口づけの跡がくっきりと赤く残った。

これがずっと残っていればいいのに。銀時は思った。

脚を持ちあげて舌を這わす。ぎりぎりのところまで舌を伸ばしても、そこには触れない。新八が欲しいと言うまで、絶対に触れない。

新八が俺を求めるまで、触ってなんかやらない。

焦らすような愛撫は時に残酷だ。新八は自分の中心に渦巻く熱を解放したくて仕方がない。せめぎ合う理性と本能。

「ぎん、…あっ、」

欲を増長させるように、銀時は再び新八の胸に指を伸ばした。爪でひっかくようにしてやると、面白いように体が跳ねる。

「触って欲しいなら、そう言わなきゃ。」

散々なぶった肌から顔を上げて、新八の顔を見た。水の膜の張った瞳が銀時を見上げる。

「銀さん…」

少し前までは、こんな風に名前を呼んでくれることもなかった。ただただ銀時が新八を求めるだけだった。それに耐えられなくなった銀時を、新八は受け入れて抱きしめてくれた。

それで充分なはずだったのに。

「言って?新八。」

求めて欲しい。俺が欲しいと、言ってくれないか。

銀時は新八の額から頬をするりと撫でた。邪魔な眼鏡を取りさって脇に置いた。

「銀さん、触って…」

新八が口にする銀時の望んだ言葉。潤んだ目で、今までの躊躇いもなかったように新八はそう言った。そこに少しの違和感を覚えた。

それでも自分が望むように言ってくれたことに嬉しくなり、そんな違和感はすぐに頭から消えた。

「やらし…」

しとどに濡れたそれを、ゆっくりと握る。待ちかねたようにまた先走りがどぷりと溢れた。

上下に摺ってやれば、ぴくぴくと小刻みに震えた。銀時のものと違って幼く、色の薄いそれはひどく淫猥に誘う。

「あっ、あっ、ん、ふあ…」

根元からぎゅう、と締め付けるように摺り上げる。新八は快感に煽られて両脚をさらに広げた。ぐちゅ、ぐちゅ、と水音が耳を支配していく。新八の足の指に力が入って、甲に骨が浮き出る。

銀時の下で乱れて溺れていく新八の顔に、たまらなくなって口づけた。

「う、むっ、んん…」

知らず手は速度を上げて、新八を絶頂へ導いていく。熱い。新八自身と銀時の手が同じ熱を共有している。それは今重ねている唇も同じだ。溶け合うように絡まりあう。

唇を離して、達する瞬間の新八を見た。

「あうッ…!だめっ、イッちゃうッ…!」

新八は苦しげに眉を寄せて快感に耐える。のけぞった首に筋が浮かんだ。自分の手で新八が達する。そのことに更に欲が掻き立てられる。銀時の導く通り、新八は白濁を吐きだした。

「はぁ、う…」

「ねぇ、新ちゃん。」

熱を吐いた新八は、銀時を置いて冷めていってしまう。銀時は忙しなく着流しを脱ぎ、ベルトを外してズボンの前を寛げた。

「俺も気持ち良くしてほしいんだけど。」

解放され力の抜けた体をふらりと起して、新八は銀時を見た。前髪の隙間から見えるその瞳に銀時はぞくりとした。扇情的に誘っているような瞳。引き込まれそうな漆黒。

「なに…すれば、」

「これ。」

銀時は新八の右手をつかみ、自分の股間に当てた。そこはもう十分にいきり立って熱を持っている。

「新ちゃんの、そのお口で、舐めて?」

汗で湿り気を帯びた黒髪をするすると撫でて、その上気した頬に手を当てた。躊躇することなく、新八は銀時の脚の間に四つん這いになった。銀時のズボンと下着を下ろして、それを取り出す。

先端をちろちろと、赤い舌が行き来するのが銀時から見えた。猫がミルクを舐めるようにぴちゃぴちゃと舌を動かす。先走りが垂れたのが分かった。

「くっ…やべーなこれ…」

欲しがるように銀時のものをしゃぶる新八は、自分の檻の中にいる。そう思える光景だった。頭に血が上る。裏筋を舐め上げられればたまったものではない。新八が与えてくれる快感に目眩がしそうだ。

「っは、新、ぱち…」

新八の唾液と、銀時の先走りが混じり合って滴を作ってこぼれていく。

銀時は自分の広げた脚の間に見える尻に手を伸ばす。双丘の真ん中にあるくぼみに、指をつぷりと入れた。幾度となく慣らされたそこは、すでに拒むことはない。

「う、んうッ!?」

「ほらほら、休むなよ?」

中指をぐぐ、と押し込んでいけば、新八の腰が持ち上がる。ゆっくりと抜き差しすると、口の方が留守になってしまう。

「だめだって。ちゃんと咥えて。」

腰を浮かせて、新八の口の中に無理やり自身を押し込んだ。苦しそうに歪められた顔が、少年の心を代弁している。銀時はそれを見ないふりをした。

「う、ぐぅ、」

「新ちゃんここ、すげーヒクヒクしてるよ?欲しくなっちゃった?」

指をさらに入れると中の肉が絡みつく。指を逃すまいときゅうと締まった。中で指を動かしてやれば、我慢できなくなったのか、新八は口を完全に離してしまう。その度に銀時は腰を浮かせて新八の口に執拗に入れた。

この中に早く入りたい。だけどもう、俺だけが求めるのは嫌なんだ。

お前も欲しがってくれなきゃ、一つになれない。

「新ちゃん、言って。欲しい、って。」

与えられる快感と与える快感の狭間で揺れる少年に言葉を促す。

欲しい。欲しいんだ。お前が欲しい。満たされることなんてない。底の見えない欲望は、新八を道連れにしようとする。

俺だけじゃ嫌なんだ。お願い。俺を欲しがって。

「言ってよ。」

新八の口から自身を抜いて、その顎に指をかける。上を向かせて視線を合わせると、さっきと同じ漆黒が銀時を射抜く。この漆黒に堕ちていく。

「欲しい、です。」

その瞳で新八は言った。望んでいた言葉なのに何かが違う。分かっていても今はその言葉が聞けただけで十分だと、自分を納得させた。

這いつくばる新八の脇の下に手を入れて抱きかかえると、自分の腰に跨らせた。新八の腰に両腕を回して固定する。

「欲しいんだろ?」

お前が、言ったんだから。俺が欲しいって。

新八は銀時の首に腕を回してしがみついた。銀時から新八の顔は見えない。

新八の答えを待たずに、銀時はその中に自身を挿れた。

「あぁッ…!」

中は熱い。肉が波打つように銀時自身にまとわりつく。そこから伝わる快感が脳に達する。自分は新八を抱いているのだ。

抱いているのに。

これで一つになれるはずなのに。

望んだその中に入っても、一つにはなれないことを思い知る。













眠る新八をその胸に抱きながら、その頬に指を置いた。額に掛かる前髪を撫でつけてそこに口づけを落とす。新八が目覚める様子はない。

この肌も、髪も、あの漆黒の瞳も、どうしようもなく手に入れたい。でも。

いくら求めて求められてつながっても、自分と新八は別の人間であることは覆しようのない当然の摂理だ。頭では分かってる。でもそんな当たり前のことさえ、認めたくない。

新八はそれを分かっていた。だから俺の望むように言葉を吐いた。

それでも欲しい。できることなら新八を溶かして、俺の体の中に入れちまいたい。だけどそんなことはできないから、きっと俺はずっと独り。

こんなに口づけても、肌を合わせても、深くつながっても、一つになんてなれない。

お前はこんなに近くにいるのに。

「畜生…」

新八の体をきつく抱いて、銀時は唇を噛んだ。

抱きしめた新八の体はやけに冷たい。その腕も、先ほどのように銀時を抱きしめてはくれない。そのことに苛立ちを覚える。


銀時は、眠ったままの新八に口づけをする。



触れあった唇に、あったはずの熱はもう感じられなかった。









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Original/Love:接吻


手に入れるたびに欲深くなる。
2010.07.12 月見 梅

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