Short Story

□グランギニョルに僕を閉じ込めて
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真っ赤に染まる掌。
甘い甘い、錆びた鉄の匂いに酔いしれる。
横たわる白く細い身体には幾筋もの線が引かれ、奇麗な花を咲かせていた。
鋭利なナイフは少しの力だけで柔らかな肌に刺さり、生暖かい鮮血が飛び散る。

<冷めた眼をするから目隠しをした>
<何も言えないように口を塞いだ>
<動かないように縛りつけた>

狂気が満ちる中でまともな思考など働かない。すべての誤は正に変わる。



―満足ですか?センパイ。


痛みは熱に変わり、少しずつ意識を蝕んでいく。壊れた人形のように四肢を投げ出し、呼吸だけをただ繰り返した。

明日になれば涙を流して謝るのだろうか。ごめん、と。
何度も何度も自分を責め、苦しそうに顔を歪める君。想像するだけでも愛おしい。

―謝る必要なんてない。

だってこの時間だけは
他の誰も目に入らないでしょう?
ミーだけを見て、触れて、焼き付けて。
言葉も涙も手に塗れた赤だって
全部全部ミーのモノ。
もっと強く遺ればいい。
消えないくらい記憶に刻みつけてよ。
他人を想う時間などあげない。

―あぁ、奇麗だね。




虚ろな意識の中で願うは永遠。
赤く咲き誇る華の中で
狂った笑い声だけが響き渡った。



END
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