Short Story
□夕暮れの微睡み
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「綺麗な空だなー」
空を眺めるのはわりと好きだ。
立て続けにあった任務が終わり、久々の休みだった。特にすることもなく、広間で沈んでいく夕日を眺めていた。
いつもなら周りにいる連中も各々の部屋でくつろいでいるらしく、珍しく静かだった。ぼんやりと脳裏に浮かんだのはあの人で。
「はぁ、なんでセンパイなんか」
末期だなと思いながら呟いたその時。
「俺がなんだって?」
ふいに後ろから声がして振り向く。
「あー…ベルセンパイ。」
予想にもしなかったので少し焦ってしまう。
「そんなところで何やってるんですー?あ、もしかして寂しくなってミーのところに来ちゃったとか?」
ちょっとからかうつもりが言い過ぎた。本当は会えて嬉しいのに。
「ふざけんな」
そう言ってナイフを頭に投げつける。
「ぐぇ。あーもう…刺すのやめてくださいって言ってるじゃないですかー。ちょっとは遠慮してくださーい。」
「やだね。つーか捨てんな。返せ。」
表向きはげんなりしながら刺さったナイフを抜き床に落とす。注意されるのを承知で、わざと繰り返す行為。
「で、なんでここにいるんですかー?」
「…別に。暇つぶしだっつーの。」
本当は顔が見たかっただなんて口が裂けても言えない。
元から言うつもりもないけれど。
「はいはい。結局は寂しかったんですねー。さすが堕王子。いつまでたってもお子様ですー」
「てめぇ…ぜってぇ殺す」
(あれ、なんか眠くなってきたー。)
会話の途中にも関わらず、急にうつらうつらと意識が遠退く。ここ数日の疲れが出たのかもしれない。ベルフェゴールの言葉に返事もせず、ソファに座りこんだ。
いつもすぐ毒づくフランが、少し間をおいても何も言ってこない。
「無視すんな…って寝てるし。お子様はそっちじゃね?」
顔を覗き込んでみるが目を開ける様子もない。
「…チッ。つまんねぇの。」
(寝てりゃそれなりに可愛いのに、口開けば悪態ばっかつきやがって。)
そんなことを考えながらフランの隣に座り込む。何もすることもなく、また時間だけが過ぎていく。気がつけば傾いていた夕日も殆ど沈み、夜が訪れようとしていた。
「う…なんか重い」
しばらくして目を覚ますと、いつの間にかベルフェゴールもフランの肩に寄り掛かって眠っていた。
「センパーイ。」
声をかけてみても微かな寝息しか聞こえない。しかし、少しでも動けば起きてしまうだろう。
ため息をついて窓の外を見ると、暗闇の中にぽっかりと月が浮かび、また1日が終わろうとしていた。
(いつもこうしていられたらいいのに)
END