Short Story
□ひらりとかわして振り返って
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とある日の夕食後。
ザンザスとスクアーロを除く皆で団欒していたときのこと。
「ベルセンパイ、質問なんですけどー」
「なんだよ新入り」
手持ち無沙汰にナイフ投げをしていたベルフェゴールから、心底面倒臭そうな返事が返ってくる。
「センパイの好きな人って誰なんですー?いい加減諦めて教えてくださいよー。」
ここ数日何度か繰り返していた。その度にひらりとかわされ、答えてもらえない。
「んもーフラン、また同じ質問なの?ベルも教えてあげたら?」
ルッスーリアがにやけながら絡んでくる。
こんなやりとりだが、ベルフェゴールとフランとはお互いに好き合っていて付き合っているも同然。だが直接好きと伝えたことも、言われたこともなかった。
フランとしては、ここはどうやってもみんなの前で自分と言わせたくて。
「やだね」
立て続けにナイフを投げながら答えると、見事に頭に命中した。
「ゲロ…だってー。気になりますー。」
あと数センチで触れるような距離に近づき、顔を覗き込んでみた。わざわざこんなことをするのも計算のうちだとしか思えない。
「…別にどうでもいいだろ」
そう呟いて下を向いたまま踵を返し、歩いて行ってしまった。
「あー、行っちゃった。意味不明ですー。なんでミーだけこんな扱い…。」
知りたがっているわりに追いかける気配はなく、大人しくその場に取り残された。
(あらあら、ベルったら結構恥ずかしがり屋さんなのねぇ。)
一人になったベルフェゴールは部屋に向かって歩いていた。前髪で隠れてはいても心なしか顔が赤い。
「つーか…お前だなんて言えねーし。」
誰にも聞こえないような声で、ポツリと呟いた。言葉は夜の闇に溶けていく。
言えるはずのない気持ち。素直じゃないと自分でも分かっている。だが自分から言うのはなんだか許せなかった。
(だって俺、王子だし。あんなカエルに言わされるなんてムカツク。絶対お前から言わせてやる。)
廊下の先を振り返って、不敵な笑みをこぼした。
END…?
ベルフェゴールが部屋に入った後、ゆらりと揺れる影。
こっそりと柱の裏にいたのはフラン。ベルフェゴールは気づいていなかったが、実は独り言も聞いていたのだった。
(センパイ可愛すぎですー。)
END