Short Story

□君にうっかり溺死
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誰とも関わらず流れゆく自由な雲。
近づくものを拒み、馴れ合うことを嫌う。不要なものは咬み殺す。
今までそれが当たり前だったのに。

「恭弥?いるのか?」

屋上で昼寝をしていると、ディーノがやってきた。もう何度目だろうか。修業と託けてやって来ていたが、最近は何もなくてもいつの間にか傍にいるようになった。

追い払おうとしても彼は反対に近づいてくる。それならばと無視してみたが、離れることはなかった。

―でも、不思議と嫌な心地はしなくて。

こんな感情は初めてだった。どうしたらいいのか分からない。
少しずつ彼のことを考えている時間が増えていく。ふとした瞬間に笑顔が頭を過ぎる。そんな自分が、おかしいとしか思えなかった。


「恭弥、」

名前を呼ばれて薄く瞼を開けると、目の前にディーノの顔があった。
驚いて目を見開く。

「―何、する気?咬み殺すよ…!」

必死に動揺を隠そうとして睨みつける。まるで急に優しくされた野良猫のように、警戒し威嚇した。

「ん?寝てんのかなーって思ってさ。寝顔、可愛かったぜ。」

そう言って、ふわりと雲雀に微笑いかけた。
無防備な姿を見られた羞恥心と、不意打ちの笑顔に頬が熱くなる。

「どうした恭弥?」

いつもなら武器を構えて攻撃してくるところだが、そんな気配もない。

「…別に何でもないよ」


(君を見ていると無性にイラつく)
(だから今は殺さないでいてあげるよ)


―だんだん君に 溺れていく
もがくほどに 深く 深く―




END
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