Short Story

□危うく恋するところでした
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晴れた日の午後。
夏も近づき蒸し暑くなってきていた。

「こんな中で任務なんて絶対無理ですー」

任務の途中のはずだが、近くの川辺で水に脚をつけたまま寝そべっていた。
真上には大きな樹が枝を伸ばし、調度良い木陰を作っている。
上流からの水は冷たくてキモチいい。
太陽を受けてキラキラ光る水面や、川のせせらぎ。
サボっているのにも関わらず、のんびりとひなたぼっこに勤しんでいた。

―――――

「う゛ぉぉおい!フランのやつ、どこ行きやがったぁ?!」

まさに血管が浮き出るという状態。
任務中に消えたフランに怒り狂うのは、作戦隊長であるスクアーロ。
無事に任務を終えたからいいものの、予想外のアクシデントもあり、少々手こずったのだった。
説教をしようにも相手がいなければ意味もなく、剣を振り回し探していたが一向に見つからなかった。

「ベル!お前は向こうを探せ!」

とうとう他のメンバーにも飛び火し、ベルにまで指示が飛んだ。
指したのは偶然にも当のフランがいる川辺がある方向。

「またオレかよ…」

「とっとと行け―――!!」

不満に思いながらも、追い立てられるようにその場を後にした。

―――――

(カエルのせいで疲れてんのに休めねぇし…見付けたらサボテン決定)

そんなことを考えながら、森を抜けると小さな川が流れていた。
辺りを見回すと、誰かが木陰に横たわっているのが目に入る。フランだ。

「おいカエル、いい加減にしろ よっ」

言いながらもナイフを被り物に投げ付けた。
小気味よく突き刺さり、ベルに気付いたフランが身体を起こす。

「あー、ベルセンパイ」

うたた寝でもしていたのか、目を擦って欠伸をする始末。

「あー、じゃねぇし。王子がわざわざ来てやったんだから感謝しろよ」

「…どうせロン毛隊長に言い付けられただけのくせに」

「うっせ」「ゲロッ」

ぶつぶつ言いながら服に付いた砂利を払ってしぶしぶ立ち上がると、いつの間にか目の前にベルがいた。

「ちょっと邪魔ですーセンパ、」

次の言葉を発する前に、顎を上に向かされ無理矢理口を塞がれる。

「王子に手間掛けさせた罰だし♪」

数秒、フランは動かなかった。
ハッと気付いた途端、見る見るうちに頬を赤らめる。

「…ミーの唇を奪うなんて最低ですーこの堕王子」

ボソッと呟くと、下を向き、逃げるようにしてアジトの方へ歩き出す。

(しししっ やっぱコイツ可愛くねー)

満足げににんまりと笑いながら、ベルも後に続いた――。

―――――

その後。アジトへ戻ると、フランは怒り狂うスクアーロに3時間近く説教される羽目になったという。
一緒にいたルッスーリアによると、フランはどこか上の空な様子だったとか。



射止められたら 逃げられない
甘い甘い罠にご注意



End


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