Short Story
□焼け野原のユグドラシル
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どれくらい経っただろう。
立ち上がる気力はなく、座り込んだまま時間をやり過ごしていた。
しばらくすると遠くから足音が近づいてきた。誰かが来たのは分かったが顔を上げる気もしなかった。
「ベールセンパイ」
名前を呼ばれて、微かに目だけを動かし見上げてみる。そこにいたのはフランだった。
「王子だって言うなら動かずにジッとしていて下さいよー探すの大変だったんですからー」
そう言って目の前に座り込み、目線をあわせる。ベルフェゴールと同じように傷だらけだが、無事のようだった。悪戯するようにツンツンと頬を突かれる。
「…お前を探してたんだよバーカ」
少し驚いたようにキョトンとする。
「ミーのことを?ベルセンパイが?もしかしてどっかで頭打ちましたかー?」
相変わらず可愛いげのない反応を返された。少しでも心配した自分が馬鹿馬鹿しくなる。
「てめぇ、」
ふとフランを見ると、いつの間にか下を向いていた。肩も小刻みに震えている。
もしかしたら泣いているのかもしれない。
強がっていたフランもベルフェゴールのことが心配だったのだ。
(しししっやっぱカワイくねー)
「…?」
落ち着いたのか、フランがいつの間にか怪訝そうにベルフェゴールを見詰めていた。少し涙ぐんでいるようには見えるが、ぱっと見はいつものフランだ。
「うっわ、何ニヤついてるんですかー気持ち悪いですー」
「てんめー…やっぱ殺す」
そう言ってナイフを構える。しかし疲れと傷で動くに動けず、言葉が飛び交うのみでまた時間は過ぎた。
やがて駆け付けたルッスーリアに手当をしてもらい、無事に帰還した。
被害は大きかったものの、任務は成功に終わったとの報告を受けた。
「ま、堕王子なんてどうなってもよかったんですけどねー」
(たまは素直になれよ…ッ)
END