短編
□君夢想
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自然消滅後の嵯峨×律
「先輩!」
懐かしいその響きに目を開くとそこには、居るはずのない人がいた。
「律…か?」
「あ、はい!」
そこは学校の図書室。
学ランを身につけた俺は、本を読んでたら寝てしまったらしい。
こっちが現実?
そう思えるほど夢はリアルで、少し戸惑いながらも俺は心配そうな律に手を伸ばした。
「っ!///」
触れた指先から心地良いぬくもりが伝わり、俺は律を引き寄せて短い触れるだけのキスをする。
「先輩!?////」
真っ赤になりながらそうどもる律をまた、強く抱きしめキスをする。
相変わらず、口を閉じたままの律は次第に口を開いていき、深く深くキスをすれば律の手が俺の背中に回される。
それが、嬉しくて愛しくて…
「好きだ。」
想いが言葉に変わり零れ落ちた。
律はそんな俺の胸にもたれ掛かりながら小さく呟いた。
「俺もです。」
これが現実であってほしい…と思いながらも俺はあの時、言えなかった想いを何度も吐き出す。
――――――
――――
―――
「……律?」
手を伸ばすがそこにはなにもなく俺は眠たい目をこする。
そこは俺の部屋で、意識は完全に律の居ない現実に引き戻される。
「都合のいい夢……」
アイツはもう居ないのにな、と自嘲の笑みを浮かべると生温いものが伝った。
目を閉じれば今だにアイツが俺に微笑んでいる。
「どこに行んだよ。」
乱暴にベッドを殴りつけて今だに頬を伝う雫にイライラした。
君夢想
まだ、腕に残る感覚の全てが俺に都合のいい君夢想。