パラレルいろいろ5

□love is money 3rd seasonB
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 まただ…
 アルフォンスは、溜息をついて、鞄にいつのまにか入っている、手紙を見る。今日は、二通で少ない方だ。
『アルフォンス先生へ』と丸っこい字で書かれてあるその手紙は、読まなくともわかる内容のもの。
『好きです』といった内容の、いわゆるラブレター。
「僕は、教師だよ…」
 たしかに、女子高だから、男子生徒はいないので、そういう目で見るのは仕方ないかもしれないけど。
 ここで捨てるわけにはいかないし、持って帰って、兄さんに見られるのも嫌だし。いつものように、こっそりと机にいれておいて、他のものに紛れ込ませて捨てるしかない。

「職員会、お疲れ様でした。エルリック先生」
「あ、お疲れ様でした」
 今から帰宅するというときに声をかけられ、挨拶すると、自分より年下の先輩女性教師がそこにいた。
「あの、お時間があれば、食事にでも行きませんか?ちょっとしたことなんですけど、ご相談が…」
「あ、すみません。今日、用事があるので…」
「そうですか…残念です。また今度」
「ええ、すみません」
 アルフォンスは、頭を下げてから、足早に学校を出た。
 実は、特に用事というものは、ないのだが、そろそろ兄が根詰めているはずだ、と思ったからだ。
「ただいま」
 二人だけになってしまった、家のリビングは誰もいないが、蛍光灯はついていた。キッチンに誰かいる様子もなく、兄を捜して、兄の部屋へむかった。
「兄さん?」
 だが、部屋にはいなくて、首をかしげたところへ、自分の部屋から、明かりがもれていることに気がつく。
「兄さん?いるの?」
 自分の部屋の扉を開くと、兄が自分のデスクの近くに立ち、何やら読んでいる。
「わっ!」
「おまえ、モテるなぁ…」
 しみじみとそういわれて、アルフォンスはため息をついた。
「これ、全部ラブレターだろ?手紙だけでこれだけあるんだもん、呼び出して告白ってのも多いんだろ」
「…えっと、まぁ、そうかな。女子高だから、仕方ないよ。男性教師の未婚者は僕くらいだし」
「まあ、いいんじゃね?」
「で、兄さんは何の用事で来たの?」
「辞書、和英探してた」
「それは、こっちだよ」
 はい、と手渡すが、「すぐ夕飯作るから、それまでにキリつけてね」と言われ、エドワードは、うん、と返事をしながら部屋を出ていった。
…なんとも思わなかったんだろうか?
 アルフォンスは、ほっと息を吐いた。


「腹減ったあぁ」
「今できたよ。食べよ」
「うん」
 二人での食事も、慣れてきたが、やっぱり少しの寂しさはある。
「やっぱさ、若いほうがいいのか?」
「へっ?」
 食事が始まって、急にそういうエドワードに、アルフォンスは首をかしげた。
「おまえも、若いほうがスキ?」
「ど、どういう意味?」
「オレとおまえじゃ、一歳しか違わないじゃん。年下のほうが、具合がいいのかなと思って」
「なんの具合か、よくわかんないけど、僕は別に気にしてないけど」
「だから、女子高の教師なんてやってられるのかな、おまえ」
「はぁ…?」
「女子高生に手を出すやつだっているじゃん」
「ああ、まあ、いるだろうけど」
「それってさ、アルジュニアもそうなのかな」
「へっ?なんでそこでアルジュニア?」
「うん…」
 エドワードが、箸を置いて、お茶を一口呑んだ。
「今日、見たんだよな。アルジュニアが、若い子と仲よさげに歩いてたのを。腕とか組んだりして」
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