wsの長編

□July
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太陽の光がプールの底まで届いている。

水面が揺れる度に、
底の光もユラユラと形を変える。

何だか幻想的だった。

不思議と、
周囲のばか騒ぎが
聞こえなくなった。

まぁいい。
その方が落ち着く。

もうどれだけ息をしてないんだろう。

すでに100年くらいたったような気がする。

あぁ、気が遠くなるって、こうゆうことなんだ。

俺の身体は、
深海の住民に誘われて
いるかのように
ゆっくり、しかし着実に沈んでいく。

自分から動かそうという
気さえおきない。

その時、銀色の水面から
黒い影が降りてきて
俺の方に潜ってきた。

それは俺の真っ白い手を掴んで、しきりに引っ張る。

俺の身体は、
ゆるゆるとそいつの方に
流れていく。

しかし突然、
俺の意識はブラックアウトした。

ただ視界が真っ暗になってしまった後に、
唇に温かい空気を感じた。

それだけで、あとは知らない。




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