wsの長編

□August
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夏休みだ!

俺は8月に入ると、
近所の海の家でバイトを始めた。

俺の親戚が夏休み中だけやっていて、
みんな顔見知りだった。

仕事は簡単。

うきわ、かき氷、ラムネ
等の販売。
たまには海をパトロール。

時給がいいとは言えない。けど、家で宿題しなくちゃなぁとか思いながら
ウダウダしてるよりずっといい。





ラムネのたらいに
手を突っ込む。
指先からひんやりしていって、頭をつらぬいていきそうだ。

首に巻いてるタオルで、
濡れたラムネをサッと拭いて。

ビニールを外せば、
ピンクのキャップ。

何故だろう。
ラムネを開ける瞬間はいつもドキドキする。

月面着陸をする
宇宙飛行士みたいに。

ピンクを強く押した瞬間、ポンッという
かわいい音がして
白い泡が吹き出す。

まるで魔法みたいだ。

泡は俺の手を流れて、
こぼれ落ちて、
サンダルの上にふり注ぐ。

のどごしに、
炭酸が痛いくらい爽やか。




日射しに目を細める。
8月に入ってから
急に日焼けしたなぁ。

捺芽はこの夏を
どうやって過ごすんだろう。

終業式にあれだけ
テンション上がってたんだから、
きっと毎日はしゃぎまわってるんだろうなぁ。

少しだけくやしかった。

どうして、
捺芽と時間を共有出来ないだけで、寂しくなっちゃうんだろう。

俺はラムネのビー玉から
透かして太陽をみる。
ビー玉が跳ねるかわいらしい音が涼しい。
ビー玉から見たって日射しは強い。

この日射しが捺芽にも
ふりそそぐことを、
心の中で願っていた。
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