wsの長編

□September
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ナイトを
初めて目にしたのは、
2学期の始業式だった。

生徒会長という役柄から
今まで目にしてても
おかしくなかったが、
俺は部活のことで
頭がいっぱいだったのか、周囲の話題に鈍感だったのだろう。

とにかく、
意識して見たことが
あるのは、
二学期の始業式からだ。










俺は、いつにもまして
憂鬱だった。

始業式ということで、
全校生徒が、
講堂に集合している。

いくつもの列を隔てて、
この空間に星がいる。

俺のことを
心底憎んでいる星が。

そう思うと、
不安や、罪悪感、恐怖で、気が重かった。



俺はなるべく顔をあげないようにし、自分の爪先付近をぼんやり眺めていた。

校長の長い話が終わった頃だろうか。
周りがざわめき始めた。

特に女子の声が多い。

「生徒会より、
より良い2学期にするため、諸注意があります。」

なるほど、
生徒会のだれそれのルックスがいいのだろう。

俺は、いつもどうりの
決まり文句を並べる、
その生徒会役員を
見てみた。



俺はその顔を見た瞬間、
不思議な気分になった。

その気持ちは
何なのか今でも、よく分からない。

爽やかで、
切ない。

秋風が俺の心を吹き抜けたみたいな感覚だった。

そこに居たのは、
なるほどなかなかの
ルックスの先輩だった。

よく、マンガなどで
メガネをかけた
ストイックなキャラが
出てくるが、
そんなタイプの人間だ。

背が高く、
体つきもスレンダー。
外見から聡明そうで、
銀縁メガネと
黒髪が余計に
知的にみせている。

生徒会長という
生徒の頂点には、
イマイチ溌剌さとか、
インパクトに欠けるが、
淡白で、颯爽とした雰囲気は、嫌いになれない。

何より、
不思議な包容力をみにまとっている人に見えた。

人を惹き付け、
それでいて受け入れる
なんらかのカリスマ性を
彼に感じた。

「……では、
みなさんで協力し、
有意義な2学期に
しましょう。
なお、
生徒会の事務員を
募集しています。
興味のある方は、
部室棟二階の
生徒会室まで。
新メンバーのお越しを
お待ちしております。
以上、
生徒会長
内藤 空騎
(ないとう あき)より。
ご清聴いただき、
ありがとう
ございました。」

話が終わると、
またもざわめきたった。

時折、
残念そうな声が混ざる。

不思議と俺も同じ気持ちだった。

会長の話が面白かった訳ではない。

しかし、俺はもっと彼を
見ていたかった。

なぜかはよく分からない。

それはきっと、
会長のあの不思議な包容力のせいだと思う。

星と決別し、
居場所のない俺を受け止めてくれるかもしれない。

そう感じさせる何かを持っていた。

それは俺だけの感情じゃない。

多くの生徒や教師の
そういう思いが募って
彼はあの場に居たのだ。



俺は自分でも怖いくらい、たったそれだけで、
生徒会長の虜に
なってしまった。








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