彼らの恋愛事情
□その笑顔見れただけで、なんか不思議とうれしくなる
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ゴツンッ
「ッ!」
心地よい日光の所為か、すっかり爆睡していたオレは頭に鈍い痛みを感じて目を覚ました。
見ると目の前には仁王立ちでオレを見下ろす大和の姿があった。
「なんだよ、大和。」
コイツを待っていた筈なのだが、あまりに乱暴な起こし方をされて、少しムカついた。
「なんだよ、じゃねぇよ。
午後の授業全部サボって寝てるとかお前は何のために学校に来てるんだよ!」
「え?もう放課後?」
怒っている大和に言い返すより先にそっちに驚いた。
(オレはそんなに寝てたのか…)
「はぁ………。」
怒る気も失せたのか、深いため息を吐かれた。
しばらくの間、気まずい沈黙が流れた。
「お前ってさー、」
沈黙を破ったのは大和だった。
「な、なんだよ。」
「将来何しようと思ってるワケ?」
「は……?」
予想だにしなかった質問に呆気にとられる。
大和は黙ってオレの答えを待っていた。
「………保育士。」
大和の顔が余りにも真剣だったから、オレも馬鹿にされるのを覚悟で、本当に思ってることを口にした。
すると、大和はオレの方に近付いてきた。
「な、なんだよ。」
さっきと同じ事言ってんなオレ、とかどうでもいいようなことを考えていると、大和は無言でオレにデコピンをかました。
「ッてぇー、何すんだよ!」
「だったら、こんなとこでサボってる場合じゃないだろ、アホが!」
そして何故か怒鳴られた。
「は……?」
「保育士になりてぇんなら、資格取らなきゃなんねーだろーが。本当になりてぇんなら、こんなことしてる場合じゃねぇよ。」
正直、びっくりした。
……良い意味で。
コイツはオレをただの手の掛かる問題児くらいにしか思ってなくて、絶対に嫌ってると思ってたから。
こんなにオレの将来のことを真面目に考えてくれると思わなかった。
だから少し、本当に少しだけど、申し訳なさみたいなものを感じた。
凄く、凄く照れくさかったけど、オレは覚悟を決めてゆっくり口を開いた。
「明日からは…全部出るよ。」
「言ったな?」
大和はオレの言葉にイタズラが成功したガキみたいに笑って尋ねた。
「……おぅ。」
なんとなく、オレはそれを直視できなかった。
その笑顔見れただけで、なんか不思議とうれしくなる
(あ、ちなみに破ったら坊主な。)
(は!?聞いてねーし!)
(お前が守ればいいだけだろ?)
(ソーデスネ。)