彼らの恋愛事情

□放したくないって思ったら、自然と身体が動いてた
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苛々。苛々。
最近感じたばかりの苛立ちとよく似た苛立ちをオレは再び感じていた。

…というより、この苛立ちを最近頻繁に感じている気がする。


ここは教室。
今は数学の授業中。
オレは大和との約束を
自分でも驚くほど
律儀に守っていた。


それなのに。


(この状況、何なんだよ…)

当の大和センセイはというと、授業中だと言うのに、ずっと潤平と喋ってる。


「えぇー…全然、分かんねーんだけど…」

「は?何回も説明しただろうが!ここはこの公式を使って……」

分からないと喚く潤平に説明しようと、大和はグッと潤平に顔を近付ける。

いつもなら気にもとめないそんな行動に何故だか吐き気がした。

見ていたくなくて机に突っ伏した。
(早く終わんねーかな、)
この苦痛な時間から一刻も早く解放されることを願いつつ。


バンッ

突然軽い痛みと共にした音にゆっくり頭を上げると、眉間に皺を寄せた大和が、出席簿を持って立っていた。
どうやらそれで叩かれたらしい。

「何寝てんだ、アホが。」
「……寝てねぇし。」


「ほぅ、じゃぁ問15、お前が解いてこい。」

キーンコーンカーンコーン

程なくして終業のチャイムが鳴る。

「じゃあ、小泉は次の授業の前に答えを黒板に書いておくこと。以上。」

この一言で授業が終わった。

この時、俺は何かに突き動かされるように、教室から出て行く大和の腕を掴んでいた。

「…何だよ。」
理由なんてあるわけもない。しかし何か言わなければ、大和だけではなく、クラスメートにも気味悪がられる。


それは咄嗟の思い付きだった。
「問15とか全然分かんねーんだけど。」
大和は一瞬ぽかん、とした表情を浮かべたが、意図を理解したのか少し苦笑したがら首肯した。

「じゃぁ、放課後な。」

まるで宥めるかのようにぽんぽん、と肩を叩かれて、無性に恥ずかしくなったが、何故だか心はやけに弾んでいた。


放したくないって思ったら、自然と身体が動いてた
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