彼らの恋愛事情

□この胸ん中モヤモヤしてるの、お前が関係してるっぽい
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――― 放課後。

オレと大和はと言うと、数学科準備室で隣り合って座り、所謂“補習”というヤツを行っていた。

初めてこの教室に立ち入ったオレは、数学科準備室というのは名ばかりで実質ただの倉庫に過ぎないことを知った。


オレたちが使っている長いテーブルが真ん中に置かれているだけで、両脇は教材がぎっしり詰まった本棚で挟まれ、周囲には巨大なコンパス、分度器、三角定規、それに何故か凝ったデザインの硝子細工の砂時計まで置いてあった。


やけに高い位置のある窓から夕陽が差し込んでいる。




「いいか?この問題は異なる2つの実数解を持つっていう条件があるんだからー…」

オレはぼんやりとノートに説明を書き込みながら説明する大和を見つめていた。


こうやって間近で見ると、意外に白くて肌理細かい肌とか、実は睫毛が長くて二重なこととか、ペンを持つ指が凄い綺麗なこととか、そんな発見が多くて妙な気分になる。

(な、なんで男相手にこんなこと思ってんだ、オレ……)
妙にどぎまぎしている自分の心臓に気付いて我ながらキモいと思った。


―――だから気付けなかった。
反応の無いオレを訝しんで、オレに近づく大和に。


「――み、小泉!!」
ハッと我に返ったときは視界いっぱいに広がる大和の顔。

あまりの近さに思わず顔に熱が集まる。
それを何を勘違いしたのか、大和は途端に心配げな表情を浮かべる。
「小泉、大丈夫か?」


「っッ、なんでもねぇ、帰る。」
心配から差し出された手を払い、オレは荷物を引っ掴んで、逃げるように準備室を後にした。




この胸ん中モヤモヤしてるの、お前が関係してるっぽい
(追ってきてくれなかったのが、少しショックだとか…オレキモい。)
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