過去拍手小説

□ポッキー
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【高杉 晋助の場合】


「てめェ、なに食ってんだ」

鬼兵隊船内にある自室に当たり前のように入ってきた晋助は、私の食べる菓子をみて不快そうな表情を浮かべた。

『あ。食べる?新作ポッキー』

「新作だァ?」

『うん。万斉さんがくれたんだよ。クリームショコラ味』

そう言って、晋助の目の前に一本袋から取り出してみせれば眉間により一層深く皺が刻まれる。

味の名前からしてクソ甘そうだな、と飽きれたように言って煙管をくわえた。

こんなに美味しいものが食べられないって可哀想。少し晋助に勝った気がして、勝ち誇った笑みをみせてやった。

『くそ甘いよ。
晋助甘いもん食べられないんだよね。あーあ。カワイソー』

これ見よがしにポッキーをかじってやれば、晋助はくだらねぇとでも言いたげに鼻で笑った。

「おめー、甘いモンばっか食ってっからブクブクになるんじゃねェのか?」

この言葉は女子に言っちゃいけない。

額に、漫画かよと言いたくなるような怒りマークが入ったと自分でも分かった。

『オホホホ。晋助こそさー
煙管ばっか吸ってっから銀ちゃんよりもちっさいんじゃないの?ヅラよりもちっさいんじゃないの?』

「…テメェ…」

黒いオーラが揺れる。

近くに煙管を置いて、ゆっくりと距離を詰める晋助に私が気付くはあと数秒後。

『伸びる気配みられないから残念ねっ!晋助ちゃ…んん!?』

荒々しく重ねられた唇に思わず身を引けば、離れることを許すまいと腰を捕らえられる。

やってしまったと気付いてももう遅い。

滑り込んできた舌は食べかけのポッキーを奪いさり、口内に煙草の苦味を残す。ぞくりと何かが私の体を駆け巡る。

全てを食い尽くされそうなキスに晋助の胸元を両手で押した。これで離れてくれればどれだけ楽か。

こうなった彼はすごくタチが悪いことを私は知っている。


噛まれ、吸われを何度か繰り返して酸欠になりかけた頃、ようやく私を解放した。

「…あー。クソ甘ェ」

『…っ…このへん、たい』

「あァ?まだ足りねェか?ポッキープレイしてェのか?」

『断じてしたくないですっ!』

必死で謝る私を見ながら、両者の唾液で濡れた唇を拭い笑う彼はとても扇情的で。


この男の前でもうお菓子は食べないと心に決めた日だった。
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