アリスと暴君兎

□知らないって怖いね
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「へぇ…このクラスに転入してきたんだ」


コツと、三つ編み男の履いた革靴が音をたてた



黒板にチラリと目をやって、

再び私にだけ視線を注ぐ。




あれだけ騒がしかった男子もこの人の登場に静まり返り、睨みつける者や怯える者、様々な視線を向けていた。




「ん?なんだ、お前ら知り合いか」


この痛いくらい張り詰めた雰囲気の中、

星海坊主先生だけが、けろっとした表情で言葉を発した。



「あれだけの重い頭突きを女にされたのははじめてだよ」

「頭突きィ!?」



その発言に、ざわつく教室



え?え?なにこれ。

何んでざわついてんの?何で男子は、三つ編み男見ながら私もチラチラ見てんの?



「ほら、たんこぶ。君、石頭だね。俺、たんこぶできたのはじめてだよ。」


ぴろっと、髪をあげて見せたのは立派なたんこぶ。


ザワッと、また男子がざわつき出した


「なかなかやるなァ、矢沢。春雨を相手どるなんてな。このクラスの奴らでもそんな真似しねェぞ」


『…春雨……え、嘘』


「本当。
俺は神威だよ。これからよろしくね、矢沢憂」


いつの間にこんなに距離を詰めたのか


神威と名乗った彼は今日一番の笑顔をみせてくれた。



『星海坊主先生ェエ!!私、春雨に殺されるぅうう!!!匿ってぇえ!!』


あまりの近さに

というより、春雨に殺されるかもという恐怖に、思わず星海坊主先生の背中に隠れて楯にした。



「てめーでやったことはてめーで落とし前つけてこい、矢沢。

ちょ、先生の服ひっぱるな!伸びる!」


『先生!あれ、正当防衛なんですぅう!!あの人、強姦魔!』

「あは、人聞き悪いなぁ。
ちょっと強引にセックス迫っただけだろ。」

『それを強姦というんですぅうう!!』


「おいおい矢沢、自分の暴力を正当化か?そんなことしてたら、ご家族が泣くぞ」

『私に何回も拳骨したり、頭抜こうとしたの誰だ』

「あれは教育です」

『それこそ正当化じゃねーか』


「本当、このウスラトンカチ、体罰で訴えられて懲戒免職になればいいって、毎日思ってるよ」

『ねーっ…て、春雨ェエ!!』


星海坊主先生を挟んだ向こう側にいたはずなのに、

三つ編み男は私のすぐ隣にいた。



これにはまた驚き、

今度は三つ編み男がいた側に立つ、老けたガタイのいい男に隠れた。



『ちょっと、そこの目が死体のオオッさん、略してメシオ!春雨から私を守ってェエ!!!』

「誰が目が死体だ。
大体、いつまでイチャつく気だ団長。いい加減にしてくれ」

『あん?誰が団長だ。私がいつあんたの団長になった。第何師団だ、コラ』

「お前じゃねーよ」


『ノリ悪いよぉおう、このオッさん。
ゆとり世代のノリはダサくてついていけねーってか。バブルは違うってか。

あんたみたいな奴は、どこの世代いっても浮くよ。だって、目から精気を感じないもの。

なっ。ラーメンマン』


「…え?ら、ラーメン…?」



「憂、なんで逃げるの?
それなのに、なんで阿伏兎と云業とは仲良く喋るの?妬けるなぁ」

『めめめめ、メシオ!春雨なんかキレそうう!!なんで?なんでェエ?』

「いだだだ!髪ひっぱってる!ひっぱってる!!」


何かよくわからんが、キレかけの三つ編み男から守ってもらおうと、私はメシオを楯にしまくった




痛がるメシオ

ニコニコしながらキレかけの三つ編み男

オドオドしてるラーメンマン



その光景を見ながら、星海坊主先生がひさしぶりに口を開いた




「おい、矢沢」

『え?なんですか!!今、春雨に集中しなきゃ殺される!!!』







「いや。お前が髪掴んでる奴も、後ろの奴も、



三人とも春雨だから」



『エ』







知らないって恐いね

春雨トリオ





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