アリスと暴君兎
□部下の苦悩
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団長相手に頭突きかました面白い女
頭突きの時点で、
"見目麗しく、色気溢れる身体つきをしたイイ女"は期待していなかった。
…この女は、想像を超えてる女だった。というか、女という括りにいれていいのだろうか。
と、春雨第七師団副団長 阿伏兎は考えていた。
『…ちょ、すんません。
背中とか二の腕シャーペンで刺すのやめてくれませんか。あ、いたっ。微妙に痛い』
「敬語やめたらね。春雨にビビらないでいいって言っただろ?
あの頭突きかました憂に惚れたんだ。俺にビクビクしてる憂は用無しだよ」
『なにそれェエ!私の存在価値!なにそれェエ!
あだだだ!あれはほら!身の危険を感じたからであって!!私、あんなに乱暴的な女じゃないんで…いだだだ!』
「あは、なんか楽しいかも」
『なんだこのドS!!!』
俺の席は、騒がしくなった。
あの女がきてからだ。
「今度、コンパスでやってみようかな」
『それいじめ』
いるのも珍しい、団長の声も聞こえるようになった。
俺の中で一番驚いた変化だ
"春雨の神威"
この学校で知らない人間はいない程、団長の名は知れ渡っている。
団長が通れば、
不良は怯え、女は焦がれる
しかし、強き者との戦闘だけを求める団長にとって、己に従う者しかいないこの学校は、酷くつまらないもの。
長い間、団長の下にいたから、そこは理解しているつもりだ。
強い者がいない学校に居る意味はないと言いたげに、週に一日学校にいれば良いほう。
二年に進級できたのも春雨の力を使ったからであり、団長の内申の悪さはピカイチ。進級なんて到底無理な程だった
…俺も随分と頭を悩ませてきたモンだ
そんな時、団長を学校に来らせるイイ起爆剤になるかもしれない女が現れた。
それが、
『うわあぁあああ!!!!』
「もっと色気ある声だせないの?」
『このアホ毛ェエ!!!
レディーのブラのホック外してそのセリフか!これが春雨の流儀が!そんなエロ組織潰れてしまえ!!』
この女だ。
暴力団予備軍と呼ばれる春雨を「エロ組織」と呼び、誰もが恐れる団長を「アホ毛」と呼ぶ。
キレたら頭が熱くなり、とんでもない暴言を吐き、人を馬鹿にする。
そして、
『阿伏っちゃぁあああん、もうやだよぉおう。阿伏っちゃんの上司のかまちょが、もうなんか度を行き過ぎていじめっつかセクハラだよぉおう』
最後に俺に泣きついてくる。
俺がこいつの前の席なもんだから、俺の席の横に自分の椅子を置いて避難してくるのだ。
団長のかまちょ→度を超えていじめ→セクハラ→キレる→俺に泣きつく
このループがなぜか出来上がっていた。
「…お前さん何度も言ってるだろう。俺に泣きつくな」
『なに言ってんの?上司の失敗は部下の失敗。上司に泣かされた女、慰めんのも部下の仕事でしょうが』
「○沢直樹か」
冷たくあしらっても結局はペースを崩され、俺が慰めるハメになる。
……春雨に対してあんなにビビってたくせに、今はケロっとしてるんだ。どういう神経してんだ、この女は。
団長が手を出さないと言ったから調子に乗っているのか
…いい気になって、害になる前に潰すべきか。
阿伏兎は、ほっとけばいいダメ上司のためにまた頭を悩ませている自分の性分に呆れ、ハァとため息をついた
俺はほんと、上司の尻拭いをしちゃう部下だねぇ…
「…お前さんは、一応あれでも俺達の団長だぜ。それなのにあんな暴言吐いて、団長になにもされなくても部下である俺に何かされるとは考えないのかい?」
少し、凄んでそう言い放った。
青くなるか、動揺するか
どちらにせよ、その程度の女。今でなくてもこの女が団長に飽きられるのも時間の問題──ー
『…私、あんたらの団長に暴言吐いてもいいと思われる程の仕打ちされてるのに、阿伏っちゃんはそんなこと言うんだ。』
「え」
『阿伏っちゃんのばかぁあああ!変態!オジさん!留年!インポテンツゥウウ!!!』
うわぁああん、と余計泣かれた
あれ。この子、まるで読めない。
「ちょ、まって、ね。ただの例え話だから、ね?」
『もう阿伏っちゃん嫌いぃい!ED!不能〜!!』
「なんで後半下半身攻めてんだァアア!!!
オジさんまだイケるからね!全然元気だし!」
『それはそれでドン引きですけどね。ね、云ちゃん』
「え?あ、あぁ」
「ねぇ、なんで俺差し置いて楽しそうにしてるの?憂以外、殺しちゃうぞ?」
ユラリと、我等がチャランポラン上司が現れた。
明らかにお怒りだ。笑ってるけど
「だ、団長!おちついてくれ!とりあえずコンパスおきましょう!」
「おいおいおい、団長…癒能力高い夜兎でも、痛いもんは痛い…
きゃあああああ!!!!」
『団長〜まだ、阿伏っちゃんの下半身が生きてます!そこ重点的に!』
「このクソ女ぁああ!イヤァアアア!!!」
矢沢憂
顔も体も普通
口は悪い。団長にキレたあと俺に泣きつく
頭は絶対バカ
団長がこの女に飽きるのは、まだまだなようだ。
部下の苦悩
星「コルァアア!授業なんだと思ってんだァアア!」
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