アリスと暴君兎
□消えたお弁当
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「ねぇ憂」
『?なに?』
「その弁当、憂が作ってるの?」
神威と阿伏っちゃん、云ちゃんと机を合わせて弁当を食ることがお昼の日課になりつつあった、ある日。
やきそばパンを50ほど、口いっぱいに詰め込みながら神威がそう聞いてきた。
どんだけ食べるんだ、この人。
ていうか、大きいとは言えない神威の体に、どんだけの圧縮率で内臓されてるのか疑問だわ。
『まぁね』え
「へーぇ。
憂でも食い物作れるんだね」
『どういう意味だ、コラ』
「そのまんまの意味だよ。外見的料理ができない女じゃないか」
『食うことしかできなさそーな男に言われたくないわ』
神威は「俺、試食専門だし」と言って、再びパンを食べ始めた
神威の食費、大変だろうなぁ
こんだけ食べても、食べ終わったら売店いってまた何か食べ始めるし。
「凄ぇな。俺にはこんなクルクル玉子できねぇぞ」
ふと、
阿伏っちゃんが私の弁当に入った出汁巻玉子をお箸で指してそう言ってくれた。
『…阿伏っちゃん、人褒めんの上手だよね。たまにその優しさに感動する』
「そうか?」
神威に散々言われたあとだから、その優しさが余計身に染みる。
神威のムチと、阿伏っちゃんのアメ
本当、よくできた部下と上司である
『人傷つけといきながら呑気にパン食う奴、どう思う?
阿伏っちゃん、神々しいぜ』
「団長は性欲、闘争欲、食欲で出来た人間だからな。優しさなんて、あの人の脳には存在しねぇよ」
『阿伏っちゃんもそう思う?アイツは男として最低だとおもうね。なんであんなんがモテんの?
私の心はいつだって暴行されてるのに』
「バカ言うな。オメーがくる前、俺は一人であの仕打ちに耐えていたんだぜ」
『うわぁ…阿伏っちゃん、お気の毒…』
「俺はもう団長の玩具状態だったんだ、コノヤロー」
『大丈夫、阿伏っちゃん。あんなヤローには絶対に罰が当たるから』
ぶつぶつと、阿伏っちゃと日ごろの愚痴を零しあっていれば、
「…憂、弁当が…」
『へ?』
云ちゃんの言葉で、
私はお弁当に視線を向けた。
消えたお弁当
「あ、想像以上に旨い」
『ぎゃぁああ!!なんで全部食ってんの!?私お米しか食べてないー!』
「人の文句言いながら食う奴が悪いだろ。」
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神威のやきそばパンは全て後輩とか同級生とか先輩とかに買わせています。