アリスと暴君兎

□痛みと危険信号
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…日に日に矢沢の表情は暗くなっていく




それもそのはず、

何週間も一日たりとも休まることの知らない矢沢への陰湿な嫌がらせ




数学の教科書からはじまり



体育着

弁当

辞書

下駄箱



数え切れないほどの物が、ずべてズタズタにされていたりゴミが入っていたり。




さすがの俺でも、あまりの陰湿さにイライラしてきたところだった



「…矢沢、ホラこれ使え。ねーだろ、辞書」

『阿伏っちゃん、辞書持ってたんだね』

「どういう意味だてめー」

『阿伏っちゃんの辞書は漫画だとおもってました。』


元気な素振りをしていても、

それが空元気だってことぐらい誰だってわかる。



無理矢理作られた笑顔に、なにか言葉ではうまく表せないようなものが胸にひっかかった。


「…ねぇ阿伏兎」

「どうした」


ため息をつきながら、矢沢を見ていれば団長が声をかけてきた



「…犯人、知ってるんだ。俺」

「!!何…?」


矢沢には聞こえないくらいの声で、予想外のセリフを耳打ちしてきた。


ーーーなら、なぜ。


「…証拠がないからね。
でもさぁ、ちょっと限界。暴れてくるよ」

俺の聞きたかったことを分かっていたかのように言葉を続けたあと、矢沢を一瞥すると教室の扉へと向かう。


「…殺しだけはやめてくれ」


団長の背中にそうつぶやいた。


阿伏兎の声が聞こえたのか定かではないが、神威はたまりに溜まったストレスを晴らしに、長い学ランをバサリと靡かせ、荒々しく教室から出て行った



……団長もそろそろキてんな


目が開いてない日をみたことがねぇ


ピリピリした雰囲気のせいで、クラス中の男がほとんど授業をサボるし

担任に団長の出す殺気をどうにかしろといわれもした。



…それにしても、いったい犯人を知っているって一体―――







『い…っ』



考え事をしていた最中、


矢沢の悲鳴にもにた声が耳に響いた。








痛みと危険信号


「矢沢、どうした?」

『…な…なんでもな……』

「!お前、血!!」




# # #

云ちゃん、トイレなう


.


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