アリスと暴君兎

□攻めは最大の防御
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『ひいやァアア!!!!

い、い・や・だ!どけ、このっ…!』


「あは。ウルサイなぁ。暴れるなよ」



壁におしつけられ、顔を近付けられ


本気(マジ)で危ない五秒前。




イケメンに迫られたいっていうのは妄想だけで。現実になると、

ものっそい恐ろしい



うん、もう顔なんて関係ないね。一緒だよね、みんな


ブサイクに襲われようが、イケメンに襲われようが一緒である。




『暴れるわー!貞操の危機なんだもの!全身全霊で暴れるわ!!』



片腕は三つ編み男につかまりどうにもできないが、片手は自由だ。

命綱でもある片手を駆使し、私は大暴れ



三つ編み男の顔を押し退けようとしてみたり、

体をおしてみたり、

髪の毛に掴みかかろうとしてみたり。


あまりの抵抗にイラだったのか、三つ編み男は腰を掴んでいた手を離して、

大暴れする片方の手を捕らえにきた。



この手だけは守り通さなきゃ

私の貞操を守れるのはこの手しかいないのだから。



そう思ったとき。

暴れる手を追う三つ編み男の手がピタッと止まった




あ、あきらめた…?



「大人しくしてりゃあ痛いことしないのになぁ。ちょっと本気だそうかな」


そう言ったとおもうと、



三つ編み男は再び、あのお面みたいな笑顔をして見せた





あっ、ひさしぶりー

と思った瞬間、



『い、たァアッ!!!』


急に掴まれた手にはしる激痛。

その痛みに驚いて、大暴れしていた手は、ピタリと動きを止めざるをえなかった



三つ編み男はそれを見逃さない



素早くその手を捕まえて、器用に片手でひとまとめに固定してしまったのだ。




「痛かった?
ほんと、君の抵抗ってめんどくさいね。ま、でなきゃ面白くないか」


悪びれる様子もなく、

痛みと捕まった悔しさで歪む私の顔を楽しそうに見る。



チクショー。

なんだよ、この化けもん。折られるかと思ってちょっとビビったわ。


私の腕ついてる?

…あぁ、よかったまだついてた。



自分の腕の存在を確認し、安心してから、今の私の状況を冷静にみた。



両腕ともキレイに掴まれ、押さえ付けられ、背中は壁。

もう私の抵抗する術はない。



試しに腕を動かしてみたけど、やっぱりビクともしない。


化けもんですか。こいつ

片手vs両手ですけど。

少しくらい動きなさいよ



手が動いてる感触はあるのか、それに気付いた三つ編み男は口を開いた。


「まだ抵抗する気?
それにしても他の女と比べて力強いね。前世ゴリラ?」

『マジコロス。
このバカ、マジコロス!!!』

「こわいなぁ。女の子がそんな言葉使わないでよ」

『女相手にゴリラとかいう奴こそどうかとおもうわ!今すぐ謝罪しろ!土下座だ、土下座!!
この手を離して土下座しなさい!そして私は逃げる。』

「俺が逃がすとおもう?どこまでも追いかけるよ」

『よし。じゃあ離して、目つぶって100秒数えてね。もういいかい?って聞いて、私がもういいよっていったら、探すんだゾ』

「やらないけどね」

『やれよ!!そこは!』



「話を逸らそうとしても無駄だよ」


最後の抵抗とばかりに、話をそらし続けたものの、

三つ編み男にそれは通用しなかった



それどころか、

空いた手で、私の頬に優しく触れてきた



『…さわん──』


「暴れなけれりゃ、優しくしてあげる。君も、痛いより気持ちいいほうがいいだろ?」


にこっと口元が弧を描く。

今度は、女をおとす魔性の笑み。



ぞくりと、なにかが私の背中にはしった


今までとは違うこの感覚



ゾワゾワして、落ち着かない。


…嫌悪感からくるものじゃない。むしろ───



『……っ』

「…あんなに暴れてたのに大人しくなって。快楽に正直な女は好きだよ。」


三つ編み男はクスリと笑って、

私の口元に顔を、ゆっくりと近付ける



……キス、される。


さっきまで抵抗していたのが嘘のように、私は顔を背けなかった。



きっとこれこそ、三つ編み男のもつ魔性の力


こんな綺麗な男に抱かれることはもうないのだ。そうだ、受け入れてしまおう。

そのほうが、痛い思いもしなくて……



私はゆっくりと、瞼を閉じた───









『隙有りゃぁああ!!!!』


ドゴンッ!!


鈍い音がそこら中に響き渡った



それと同時に、拘束していた手が緩み、私は素早くそれから抜け出した。

そして、体を突き飛ばし、腹に蹴り一発。




『おまえとヤったら、
性病なるわ!バーカ!バーカ!』


そういって、もってるパワーすべてを使って逃げた。








攻めは最大の防御

阿「あんたこんなとこで何…

て、え?タンコブ?」

威「女が普通、頭突きするかい?」

阿「え」

威「本当、面白いなぁ」

阿「(メンドクセーことになるな、こりゃ)」



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